2019.10.27 大阪 本町 ミュージックスポット燈門
久家菜々子(flute,piano) 清野拓巳(guitar)
久家さんをライブでお聴きするのは初めて。
2016年3月4日、京都ナム・ホールのニコライ・ヘス トリオ ライブの休憩時間、どういうきっかけか忘れたが久家さんとお話しさせていただいた。
フルートを演奏されているということで「今度ライブに伺いますね」とお約束して早3年7ヵ月、ようやくお聴きでた。
何処かの芸人のように想像を絶するルーズさが原因ではない。
音源はチェックしていたが、あまりライブをされていないため、なかなか日程調整ができなかった。
主に映像に音楽をつける仕事をされていているそうだ。
音源を聴く限り、清野さんのアコースティックギターとのDUOはこれ以上ない組み合わせだし、しかも日曜日のお昼。
何をさておき行かねば。
会場の燈門も初めてのお店。
客席はカウンターのみで10人も入れば満員御礼。
マスターには失礼な言い方だが、すごい見つけた感がある。
客数の問題ではない。
音楽の愉しみは個人的なものであることを思い起こしてくれるお店。
「今月も何とか家賃を払い終えました。水道光熱費とかジャスラックはまだですので、休憩時間に追加オーダーよろしくお願いします。」
本当に好きでないとできない。
ガス湯沸かし器が壊れたそうで募金箱が置いてあった。
詳細は写真の文章を読んで下され。
100円だけチャリンとさせていただいた。
久家さんが昨年リリースされた『パティーナ』。
全曲、久家さんによる作曲とアレンジ。
「紅梅匂」、「流れゆく藤」、「檜扇」、「光待ちとる萩の下露」など、四季の移ろいを旧暦の月ごとに12曲。
1曲ごと本人によるコメントが記されている。
「清らかなる万物の移り変わり。日本に自生する純白の夏椿、そして天竺咲く沙羅の花。花びらを散らさず一日で落ちてしまう儚い花の姿。」
アンコールで演奏された『無常』より。
完成した作品は既に聴き手のものだが、じっくりと自然の語らいに耳を傾けて、自分の見た風景と照らし合わせるのも面白い。
全曲試聴できるので是非チェックしていただきたい。
清野さんのアルバムはジャケットを見るだけだと「これ持ってたかなぁ?」となる。
5年前に神戸BIG APPLE の25周年にリリースされ25曲が収められた『Book Apple』(右下)。
そして30周年となる今年『Book Apple 2』を制作された。
もちろん30曲入り。
ライブ当日に届く予定だったそうだが、CDではなく不在伝票が届いていたとのことで、新作は次回のお楽しみ。
「最後の樹は色褪せることなく、僕たちの記憶にとどまるだろう。」
『Last Tree』(左下)より。
それぞれにオリジナリティに溢れるが、ふたりの音は根っこで繋がっているような気がする。
一本の樹、一輪の花、砂時計のように積みあがっていく時の流れ、その過ぎ去った一粒へ馳せる思い。
日常で見逃しがちな微かな移ろいと小さな幸せに気付かせてくれる。
お互いのオリジナルを交互に演奏された何かの焼き直しではない唯一無二の世界。
2ndのラストに演奏されたアルバム未収録の久家さんのオリジナル。
ある企業から映像に合う曲の依頼を受けて何曲かつくられたうちのひとつ。
採用されなかったが自分の中ではお気に入りということで、初めてのライブでの演奏。
他人の評価より自分の価値観が勝る。
改めて音楽は個人的なものである。
知り合ったのは15年前くらい前で一緒にライブをするのは3回目だそうだが、マスターからの「次いつにする?」の一言で早くも次回のライブが決まった。
2月16日、日曜日のお昼。
次回は3年待たなくて良さそうだ。
それまでに湯沸かし器を購入されているだろうか。