2020.2.23 Mr.Kenny's 曽根麻央(tp,pf) 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)
トランペットとピアノの二刀流。
全額奨学金を授与されてバークリー音大に留学、バークリー音大新設の大学院の一期生として首席で卒業、国際トランペット協会主催のジャズ・コンペティションで優勝、国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション (トランペット部門) のファイナリストに選出、etcとハンパない経歴。
その経歴だけで「メインはトランペットですか?」と、麻央さんに失礼なことを聞いてしまった。
ちょっと困った表情を浮かべてやんわりと否定されたが、またやっちまった...
大谷翔平がメジャーでも二刀流に挑戦できているのは、投げては160kmの剛速球で打っては140mの大ホームランと、どちらも突出した存在だからこそ。
複数の楽器をプレーするミュージシャンは山ほど居れど、どちらもトップレベルでなければ二刀流は成立しない。
セロニアス・モンクの「We See」から、モンクが好き過ぎてモンクの曲をコンポジットしたという「Self Portrait Thelonious Monk 」での流れでガッツリ弾いたピアノは140mを超える大ホームランの凄さ。
どちらがメインとか失礼千万、どちらもメイン。
そして真骨頂であるトランペットとピアノの同時演奏。
ここぞという時に披露するのかと思いきや、1曲目からほとんどの曲で当たり前のように吹きながら弾いて、マイルス・ディビスとビル・エヴァンスを同時に一人で表現してしまう。
圧倒的なパフォーマンスに驚愕するしかない。
結成8年目にしてこのトリオでは初のライブツアー&名古屋での初ライブ。
麻央さんと絋さんはバークリー音楽大学の同期で、麻央さんと勇司さんは千葉の同郷ということで、気の置けない間柄トリオ。
ライブ前の控え席からカーテン越しに楽し気な会話が聞こえ、笑い声も絶えない。
なので、セットリストは決めずに次何をやるのかは察するシステム。
熱を帯びる演奏に、勇司さんはTシャツ姿となり、紘さんは腕まくり。
よく磨かれた革靴でコツコツと床を響かせ身体を揺らしリズムをとる麻央さん。
切れ味鋭いリズム隊がフロントでアドリブをかます麻央さんに絡めば、負けじと煽り返す。
移動中の車内は修学旅行のようなノリだったそうだが、そのときのはしゃいだ会話がそのままステージ上で展開されているようだ。
メガネでスマートでタッパがあり雰囲気も QUIN' KRANTZ の伊藤寛哲さんに似たものを感じたので麻央さんにお話ししたところ、バークリー時代にボストンでルームメイトだったとのこと。
2年前にリリースされた「INFINITE CREATURE」。
2枚組で、Disc1がアコースティック、Disc2がエレクトリックと、こちらも二刀流。
それがデビューアルバムでしかもセルフプロデュースだなんて前代未聞。
誰しもが実力を認めないとできないこと。
そのアルバムには、アコースティックとエレクトリックそれぞれ1曲ずつ入れたお気に入りのスタンダードに和のテイストを織り込んだオリジナルなど、存分にやりたいことが詰め込まれている。
しかも、Disk2ではルームメイトだった寛哲さんは参加していないものの、井上銘さん、山本連さん、木村紘さん、と同じ時期にバークリーで学んだ兵どもの名前が連なる。
このメンバーを含む現在30歳前後はジャパニーズジャズの黄金世代と言っていいだろう。
その面々による会心の一撃。
木村紘さんがメンバーの関西の黄金世代トリオのライブを企画させていただいた。
紘さんがバークリーを卒業して帰国後直ぐくらいに結成されたので、こちらは結成6年目にして名古屋での初ライブ。
ケニーズの扉を開けるとアルコール消毒液が設置されていた。
やはりキャンセルがあるそうで、何処も大変みたいだ。