necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

本気のしるし・ロストベイベーロスト

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2020.10.11 

シアターカフェ 『ロストベイベーロスト』

センチュリーシネマ 『本気のしるし』

 

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ロストベイベーロストの上映後、主演の松尾渉平さんが舞台挨拶に立たれた。

この日の次の上映後には松尾さんに加え、撮影・編集の米倉伸さん、整音の斎藤愛子さん、出演の福本純里さんが来られ、豪華な舞台挨拶になったそうだ。

でも、この中に名古屋出身の柘植勇人監督の名前はない。

本作撮影後に他界されたため、劇場デビュー作が最期の作品となった。

 

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京都造形芸術大学 (現・京都芸術大学) の映画学科を卒業して間もない若者たちによる作品。

京都造形芸術大学と言えば少し前に『二人ノ世界』を紹介させていただいたが、撮影時期的に繋がりがあるだろうと思われる。

 

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何でも屋として怠惰な生活を送る陽平(松尾渉平)がある日家へ帰ると、暗がりの中で恋人の凛子(村上由規乃)が見ず知らずの“赤ん坊”を抱いていた。「赤ちゃん、持ってきちゃったみたい」。ポツリとそう答える凛子に驚き呆れる陽平。未来のない生活の中、誘拐という形で強引に母になろうとする凜子。やがて陽平はその“赤ん坊”と向き合い始めるが…。

 

柘植監督がフィルムに焼き付けた熱量を、どれだけ温度を落とさずに編集できるのか。

ヒリヒリするような映像の中に残したメッセージを探す。

スクリーンに映し出された虚無感を抱えて行き場のない、何処かに居そうな人々は、きっと何処かの街の何処かに居て、きっと懸命に生きている。

 

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ヒモで納豆トーストにタバコをくわえる陽平とは違って、爽やかな好青年の松尾さん。

10月23日公開の青山真治監督『空に住む』にご出演されているとのこと。

髪がピンク色ですぐにわかるそうなので探しに行きます。

主演の多部未華子さんにはお会いになられたのかなぁ。

 

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シアターカフェでの上映は10月18日 (日) までなので、是非。

 

 

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シアターカフェを出て、名古屋PARCOへ。

上映時間が約4時間あるので、うどん屋の前で入ろうかと迷ったが、さほど空腹ではなかったのでやめといた。

センチュリーシネマにて、深田晃司監督 『本気のしるし』《劇場版》を鑑賞。

名古屋のテレビ局、メ~テレが制作し大好評だった深夜枠のドラマを再編集した作品で、カンヌ国際映画祭の「オフィシャルセレクション2020」に選出されるという快挙を果たしている。

 

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深田監督を知ったのもシアターカフェ。

『ほとりの朔子』『椅子』など、長編に短編といろいろ鑑賞させていただいたが、中でも『東京人間喜劇』には衝撃を受け、ご無理をお願いして上映会を企画させていただいた。

なので、テレビドラマは全10話、鑑賞済み。

今まで原作モノは撮られていなかったので、まずそこに驚いたが、映画学校の時代にコミックを読まれて、ずっと映像化を考えておられたとのこと。

しかも、当初から映画ではなく連続ドラマで撮りたかったそうだ。

なるほど、一話ごとに森崎ウィンさん演じる辻と一緒にどんどん深みにはまっていく。

映画として2時間の作品を撮っていたら、これほどの作品にはならなかっただろうし、編集して4時間の作品にしようと決めたのは映画に対する『本気のしるし』である。

北村有起哉さん演じる脇田が辻に向かって「辻さんは心の奥で地獄を求めている、葉山さんはそれに好都合なんです」と言うシーンに、長年あたためてきたこの作品は深田監督の洞察力の原点なのかもと思った。

心に纏っているものを脱がされていく。

 

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その葉山浮世という難しい役を見事に演じた土村芳 (かほ) さんは素晴らしかったが、彼女もなんと京都造形芸術大学のご出身。

『二人ノ世界』の土居志央梨さんとは年齢が近いので多分お知り合いだろう。

それぞれ、土村さんと土居さんでなければまったく違う作品になっていたと思うと、改めてキャスティングの重要性を感じるしかない。

途中から髪をピンクに染めて豹変したみっちゃんを演じた福永朱梨さんにもやられた。

 

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17時25分から上映開始で、232分の上映時間に予告編・休憩時間もあり、劇場を出る頃には21時40分を回っていた。

おそらく空腹のせいだろう、残り1時間くらいからお腹が鳴り続けた。

後ろの席の方、聞こえていたらすみません。

咳はこらえることができても、お腹が鳴るのはどうしようもない。

でも、臓器が空腹を訴えていても、脳ではまったく空腹を感じなかった。

もちろん、ケツの痛みも。

スクリーンに引き込まれて、あっという間のエンドロールだった。

最高の映画のしるし。

 

10月18日 (日) 15:50の回上映後に深田監督の舞台挨拶があるので、是非。