necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

彼女は夢で踊る

f:id:necojazz:20201121234934j:plain2020.11.21 シネマスコーレ 『彼女は夢で踊る』 時川英之監督

広島に実在する閉館が迫ったストリップ劇場『広島第一劇場』を舞台に、忘れていた過ぎ去りし日々の淡い恋がステージのライトに浮かび上がる。

 

おそらく多くのミニシアターがそうであるように何処のストリップ劇場も経営は厳しいであろう。

もちろんコロナ禍の影響もあるが、世の中の流れでコロナ禍の遥か以前に東海3県では岐阜柳ケ瀬にある『まさご座』だけになっていた。

そこに貼ってあったポスターでこの映画のことを知った。

 

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ストリップ劇場について間違った認識や偏見を持つ方は少なくないだろう。

音楽や映画や舞台などに芸術性を謳うようにストリップもその範疇にある。

振付はもちろん、選曲や演出、衣装に小道具など、踊り子さんひとりひとりが自分の世界を創り上げ、研鑽を積み重ねる。

そして実力主義の厳しい世界である。

 

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スクリーンの中で舞う岡村いずみさんは本当の踊り子さんと見間違え、矢沢ようこさんは本物の貫禄。

お二人の舞いの美しさに見惚れるだけでも観る価値十分。

 

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舞台挨拶での時川監督。

主演の加藤雅也さんの役づくりは、劇場の社長さんを外見のモノマネではなく本質を再現され、踊り子さんはその演技だけで号泣されたそうだ。

事情により監督が思い描いていたラストシーンが撮れなくなり、当日の朝になっても決まっていなかったそうだが、禍を転じて福と為す。

お話しで伺ったラストシーンよりこちらで良かったのではと思う。

松山千春さんの『恋』とレディオヘッドの『クリープ』、選曲も秀逸。

 

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スコーレに行く前に伏見ミリオン座で『ばるぼら』を鑑賞して、こちらも素晴らしかったので感想は別途書きたいと思うが、余裕で移動できるはずだったところリモートの舞台挨拶があり、せっかくだからと最後まで居たら少し上映時間に間に合わなかった。

居酒屋で木下とサラが出会うシーンだったので、まだ始まったばかりだろう。

真っ暗な中でも満席であることは分かったので、座席伝いに前に行くと最前列の席が空いていて、ストリップで言うところのかぶりつきに腰を下ろしたが、道理で空いているはずで、舞台挨拶のコロナ対策として最前列は座ってはいけなかった。

暗くて気付かなかったとは言え、すみません。

 

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チケット販売が自動販売機やオンラインが当たり前になった中、未だに手売りをしているのはミニシアターやストリップ劇場などわずかになった。

最初の数分遅れて入場したことには関係なく、また足を運びます。

 

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主人公はストリップ劇場という青春の場所をただひたすらに守り続けてきたが、閉館の危機にふと立ち止まり、歩んできた道のりを振り返る。

もちろん片道切符で後戻りすることなどできない。

ただその道のりを噛みしめるだけ。

涙の甘じょっぱい味がした。