necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

名も無い日

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2021.6.6 名演小劇場 日比遊一監督 『名も無い日』

 

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名古屋市熱田区に生まれ育った自由奔放な長男の達也(永瀬正敏)は、ニューヨークで暮らして25年。自身の夢を追い、写真家として多忙な毎日を過ごしていた。
ある日突然、次男・章人(オダギリジョー)の訃報に名古屋へ戻る。自ら破滅へ向かってゆく生活を選んだ弟に、いったい何が起きたのか。圧倒的な現実にシャッターを切ることができない達也。三男(金子ノブアキ)も現実を受け取められずにいた。
「何がアッくんをあんな風にしたんだろう?どう考えてもわからん。」
「本人もわからんかったかもしれん。ずっとそばに、おったるべきだった。」
達也はカメラを手に過去の記憶を探るように名古屋を巡り、家族や周りの人々の想いを手繰りはじめる。

(公式サイトより)

 

写真家でもある日比遊一監督の実話に基づいた私小説的映画で、日比監督(小野達也)を演じた永瀬正敏さんも写真家としての顔を持つ。

永瀬さんのInstagramは常に拝見しているし、高浜市やきものの里かわら美術館で今年開催された永瀬正敏写真展『bloom』にも足を運び、それらの写真からは寡黙ながらも強い信頼感を受け、その感覚は日比監督の映画の中にも流れていた。

パンフレットの中に「俳句のようにミニマムな映画にしたいと思いました」と言う監督の言葉があったが、説明を極力省いた科白とそれに寄り添う映像が紡ぎ出す余白に、死生感や大切な人への想いが余情として漂っていて、それをどのように感じ取るのかは鑑賞者の感性に委ねられる部分が大きい。

観た人によって様々な受け取りができる作品は信頼できる。

 

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希望する職業に就いたり、プロスポーツ選手や芸能界で成功するなど、夢を叶えることは素晴らしいが、そこで壊れてしまっては何にもならない。

「何がわかるんだて」オダギリジョーさんの演技を越えた心の悲鳴を口にするシーンは息ができなくなるほど深く胸に突き刺さった。

シャッターを切れなかった日比監督は、ようやくそれを受けとめることができたということか。

デジタルカメラはゲームをリセットするようにデータを消去できるが、フィルムに焼き付けた画像は人生のように消すことはできない。

東海三県先行公開に続き6月11日より全国公開される。

じっくりと向き合えるよう、映画館で観るべき作品である。