necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『のさりの島』山本起也監督ドキュメンタリー作品特集上映

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2021.7.23 シアターカフェ

『のさりの島』山本起也監督ドキュメンタリー作品特集上映

『ジム』『ツヒノスミカ』

 

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『ジム』

シアターカフェのオーナー、江尻さんから「ジムはブルーが好きなら絶対に気に入ると思いますよ」と、オススメしていただいた。

どちらにしても伺がう予定だったが、ブルーは今年前半のマイナンバーワンを争う作品なので山本監督とは関係ないところでハードルは上がった。

 

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川崎市のとあるボクシングジムを舞台に、そこに集まる若者たちの姿を追ったドキュメンタリー。22歳でジムを立ち上げた北澤鈴春と、ジムに通う若者たちの不安と希望を映し出す。山本監督デビュー作。

(MOVIE WALKER PRESSより)

 

鑑賞後、江尻さんに「おっしゃる通りでした」と、上がったハードルを余裕でクリアしたどストライクの作品だった。

シャドーボクシングのくだりや、同じジムの仲間の勝利を喜べなかったり、ボクシングを続ける理由など、確かにブルーと重なる部分は多い。

ブルーの吉田監督は元ボクサーであり、山本監督は撮りたい被写体に接近するためボクシングジムに入門してプロテストにも合格している。

実際に拳を交えた経験のある者の目線は経験のない者とは違うのだろう。

 

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監督トークで印象に残ったのは「ドキュメンタリーは撮りながらシナリオを書いていきラストショットを探す仕事」という言葉。

足かけ6年間ずっと手探り状態で、途中の2年間はまったく撮影をしなかった期間もあり、今どこを歩いているのかもわからないというドキュメンタリーの怖さも知り、泣きながら撮ったというラストの試合のシーンはこれまで数々観てきたボクシング映画で比べるものがないくらい圧倒的だった。

いや、ボクシング映画に限らず、すべてのスポーツを題材にした映画の中で、と言い換えても過言ではない。

リングに立つボクサーだけでなく客席で見守るボクサー達も監督も、もがき苦しみ辿りついたラストシーンだからこそ。

2003年の作品だが、当時名古屋では公開されなかったそうなので、これを見逃がすのはもったいなさ過ぎる。

 

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『ツヒノスミカ』

 

www.youtube.com

 

10数年前にじいちゃんを亡くし、ずっとひとりで住んでいたばあちゃんが、寂しいと言った・・・
その家に、ばあちゃんは、ひとリで住んでいた。毎朝、2枚のパンと納豆、それにリンゴを絞ったジュース。何十年も淡々と続けられた、変わらない暮らし。その家が取り壊される。家中に山積みになったガラクタ。それは、この家に流れていた時間の証。「それを捨てられちゃ困る。死んでも捨てられない」と、ばあちゃんは呟く。解体される家。ひとつ物を捨てる度に、ひとつの時間が消えてゆく。ささやかだけれど、慈しむように営まれたひとつの歴史の終わり。前作『ジム』では、多摩川沿いの小さなボクシングジムの若者たちの姿を見つめ続けた山本起也監督の新作は、ばあちゃんの家の終焉を愛おしむように見つめた、ひと夏の小さなレクイエムとなった。

(公式サイトより)

 

『ジム』が『ブルー』好きにオススメなら、『ツヒノスミカ』は現在公開中の山本監督最新作『のさりの島』がお気に入りの方にオススメである。


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「のさりの島の艶子さんは実の祖母のマツさんをイメージされたのですか?」と質問をさせていただくと、「ちょっと近いですね」「近くなっちゃった」と、山本監督。

わざと近づけたわけではないが、意図せず近くなったようだ。

商店街でお店をやっているという設定もそうである。

被写体との関係性が独特で、これぞドキュメンタリーだと思っている伊勢真一監督の『奈緒ちゃん』と同じ空気が流れている作品だと思ったらカメラマン(内藤雅行氏)が同じ方ということだった。

最初はカメラがあることに違和感をもっていたおばあちゃんが、徐々にカメラマンの内藤さんと仲良くなって、自分が何かをすれば内藤さんが助かるのか、というような意識に変わり、その関係性の変化を撮っていくのがドキュメンタリーであるという監督の考え。

確かに、ありのままを撮ればそれはドキュメンタリーではなく、記録映画になるのではないか。

観客としても勝手におばあちゃんとの関係性が出来てきて、今日はお客さんが来なかったというシーンには誰か行ってやれよと思い、90歳にして手すりを持たずにお店の階段を駆け上がっていくシーンにはスゲーと声を掛けたくなる。

ドキュメンタリーでなければそうはならない。

 

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上映後に監督が「刈谷に行く前に寄りましょうか」と提案され、その時点では確定ではなかったが、どうやら7月25日(日)の13時からの『ツヒノスミカ』の上映前の舞台挨拶が決まったみたいだ。

刈谷日劇での『のさりの島』はこれからの上映だが、シアターカフェは25日で終了する。

なので私のオススメは、25日はシアターカフェで監督の舞台挨拶後『ツヒノスミカ』を鑑賞して、監督のおばあちゃんのイメージを持って、後日に刈谷日劇で『のさりの島』を鑑賞する。

『のさりの島』がより楽しめるはずだ。