2021.10.29 ジャズ茶房靑猫
大澤愛衣子 (Vn) 大光嘉理人 (Vn) 福田紗瑛 (Va) 三谷野絵 (Vc)
開演5分前に靑猫に到着するとカウンター席しか空いていない盛況ぶり。
5年目となった『クァルテット レスピーロ』のカフェライブ。
室内楽の究極のスタイルと言われている弦楽四重奏をカフェで気軽に楽しめるというのだから人気があるのもうなずける。
毎回テーマを決めてそれに沿ったプログラムを組まれていて、今回は「5」を表すギリシャ語由来の接頭語 penta の頭文字「P」に因んだプログラム。
『Pについての。』
お洒落なプログラムはフランス料理のコースメニューのようで、まずはアペリティフ代わりのコール・ポーターの『JUST ONE OF THOSE THINGS』。
短めのアレンジでほんのりと心を酔わせ、さあこれからどんなコンサートになるのかワクワクした気分にさせてくれる。
オードブルのチャイコフスキーは4艇の弦の彩りの華やかさを感じさせ、スープにはピチカートだけで奏でる楽し気なヨハン・シュトラウス。
ピアソラは2回目のカフェライブから取り上げているこのカルテットの定番で、ドラマチックで聴き応えのある魚料理。
初めて名前をお聞きしたフィリップ・グラス。
世間的な認知度は高いと言えないが、こんな曲はいかがでしょうか?と提供してもらえるのもこのカルテットの特徴で、少ない音数を繰り返すことによって響きの面白さを感じる、口直しのソルベ。
肉料理のベートーヴェンは壮大かつ重厚で圧倒的な威厳さに包まれる。
人間が作ったのではなく、天から降りてきたような美しさは、弾く側も相当の覚悟がいるという、今夜のハイライト。
ジェームズ・ハンレイは、ちょっと小粋でお洒落なデザートナンバー。
締めくくりのコーヒーは香り高い響きがするラヴェルの至福の一杯。
余韻が残る芳醇な味わいだった。
アンコールはこういう機会でないと弾けないのでと、鬼滅の刃でもお馴染みの『紅蓮華』。
アンコールのみ写真と動画OKで、カウンターからの1枚。
MCの様子からして、鬼滅をご覧になられているのは4人中1人かな。
そう言う私も観ていませんが、もちろん曲は聴いたことがあって、誰しも楽しめる選曲。
大光さんは『竜とそばかすの姫』の音楽にも参加されているらしい。
普段ジャズを中心に聴いている者としては、ベートーヴェンの曲紹介のときに「この曲を弾くことが夢でした」ということを話されていたのがジャズのライブでは聞かれない良い言葉だなと思った。
ジャズは巨匠と呼ばれる方の曲でもリスペクトしながら自分なりの解釈で自由に表現するが、クラシックは作曲者の意図をくみ取って忠実に再現するため、曲に対する思い入れはジャズとは違うものがある。
演奏が終わったときの空気もジャズとは違ったものを感じて、弦楽四重奏の素晴らしさと凄さに痺れた。