necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

ボクたちはみんな大人になれなかった

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2021.11.10 伏見ミリオン座 

森義仁監督 『ボクたちはみんな大人になれなかった』

 

燃え殻さんが書かれた同名小説の映画化。

燃え殻さんと原作の小説を知ったのは文庫本が発売になったときのプロモーション動画で けもの の『リップクリームダブ』が使われていたことから。

けもの はこれまでに3回ライブを主催させていただいている思い入れのあるミュージシャンで、その短い動画も私を小説にいざなってくれた。

「滅亡しなかった星で今日も生きてる」とはノストラダムスの大予言のことである。

 

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1995年に文通で知り合った「自分よりも大切な存在だった」彼女 (加藤かおり) との別れが物語の起点になっていることから、小説では43歳だった主人公 (佐藤誠) は、映画では2020年に46歳という設定になっていた。

いずれにしても私は誠より10年長く生きていて、ドンピシャの世代ではないが、それでもビタビタに感情移入でき、登場人物は誰しも愛おしく、ドンピシャの世代の方には堪らないだろうな。

ピンポイントで高田良三さんには絶対的にオススメする。

おそらく既に鑑賞済みだと思うが、一応Facebookでタグ付けしときます。

 

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現在から時を遡っていく時代背景を描くセンスには、そうそうと何度も頷いた。

ポケベルに電話ボックス、カセットテープにワープロ

辻仁成が言いそうな言葉とか、テレビからつぶやきシローの声が聞こえたり。

あと、中島らもの小説に、ウォン・カーウァイの映画も。

誠が乗っていた車は何ていったっけ?

 

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安ホテルのテレビで『ノストラダムスの大予言』にチャンネルを合わせていると、誠の会社で作ったテロップが流れるが、誰の記憶にも残らない仕事だそうだ。

 

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伏見ミリオン座のポップは毎回私を楽しませてくれる。

足を止める人は決して多いとは言えないが、少なくとも私の記憶には残っている。

今回も素晴らしい仕事をありがとうございます。

NETFLIX で同時公開されているが、暗い中で大きなスクリーンで観るのはやはりいい。

 

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誠とかおりが付き合うきっかけとなった小沢健二はまったく通って来ておらず、私の世代では佐野元春かな。

20歳のときにリリースされた『VISITORS』には衝撃を受けた。

当時私の周辺ではラップという言葉はまだ周知されておらず、新しいアルバムで全編お経を唱えているという話をしていた。

 

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佐野元春の代表作というより邦楽史の中でも最重要のアルバムと言えよう。

彼の音楽を聴くと気持ちは一瞬にしてあの時代に戻る。

バイト先の先輩が原田知世似の娘を紹介してくれるというので嬉々として行ったが原田知世さんがいるはずもなく、ヒロシ&チーボーのチーボー(とびきりとは言えなくてもそれなりにカワイイ) だったし、ホットドックプレスなどのハウツー本を買ってはデートはその通りにするのが最善手だと信じていて、キッチュ (松尾貴史さん) の言うことをふむふむと読んでいた。

結局、読んだだけだったけど。

 

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エンドロールでは馬の骨の『燃え殻』が流れる。

原作者のペンネームはこの曲名から拝借されていることはお聞きするまでもない。

そしてラストの映像へ。

場内が明るくなっても、あと30分はこのまま余韻を噛みしめたい気分だった。

チーボー、どうしているのかなぁ。