2022.1.15 シネマスコーレ 野本梢監督 『愛のくだらない』
昨年の2月に愛のくだらないTシャツを購入してから11カ月。
ようやく鑑賞することができた。
誰しも生きづらさを抱えているのだろうが、他人の生きづらさについては無関心である。
もちろん私も生きづらさを抱えているが、他人も無関心だろうし、悟られないようにもしている。
LGBTに妊活に仕事上の理不尽やネットの書き込み等々、一見いろいろ詰め込み過ぎのように思えるが、実際の社会でも生きづらさはてんこ盛りで、誰しもが自分と同じように生きづらさを抱えて生きているのだと気付けばもう少し寛容な社会になるだろう。
生きづらさで転んでも立ち上がれば人として強くなり成長できる。
清掃員のおじさんの過去が気になるが、野本監督の理想の人間像なのかも。
舞台挨拶には野本梢監督、主演玉井景役の藤原麻希さん、景の友人スミス椿役の橋本紗也加さんが登壇され、俳優のお二人はこれまでの野本作品に主演・出演されていて、気の置けない仲間によるざっくばらんなトークとなった。
作っては壊し作っては壊しを繰り返しながら作品を形付けていく野本監督の手法に、描いては塗り重ね描いては塗り重ねをすることによって深みを増す油絵のようにストーリーの深みがどんどん増していく様子が伺えた。
最初にデッサンした逆プロポーズは影も形もなくなっている。
この作品にはジェンダーによる生きづらさもテーマになっていて、ラジオを聴いていたらたまたまSDGs (持続可能な開発目標) の「ジェンダー平等を実現しよう」について話していて、日本の達成度は4段階のうち最低レベルということだった。
国会議員に占める女性の割合は9.9%で191ヵ国中147位。
男女の賃金差は24.5%で女性の賃金は男性の75%ほどしかない。
家事や子育てなどの無償労働の男女差は1日あたり183.5分で3時間以上女性の方が多い。
その中でこのところの女性映画監督のご活躍はめざましいものがある。
シネマスコーレに行く前にシアターカフェにて、映画コンパ!略して映コン!(シネコンじゃないよ) に参加して2021年に観た映画マイベスト10について語り合った。
私のマイベスト10
1.くじらびと
2.少年の君
3.アイダよ、何処へ
4.BLUE/ブルー
5.あのこは貴族
6.素晴らしき世界
7.先生、私の隣りに座っていただけませんか?
8.由宇子の天秤
9.のさりの島
10.東京自転車節
おまけ.偶然と想像 (1/3に鑑賞のため)
『くじらびと』観て、2014年マイベスト10の1位『ある精肉店のはなし』を思い出した。
牛の飼育から、屠畜、解体、販売までをやっている精肉店を営む一家のドキュメンタリーである。
生物学上、鯨と牛は同じ目(もく)で、反捕鯨団体はもちろん牛も食べていないよな、と言いたくなる。
鯨の目がアップになり涙を流すシーンがあり、牛も涙を流すと言われていて、それが生理的なものなのか感情によるものかはわからないが、インドネシアのマレラ村に住む人々が手作り舟と銛一本で命を懸けて鯨に挑む姿には、愛情を込めて育てた牛を屠畜するときの神聖さをも感じた。
必要以上に獲ることはせず、感謝し、分配し、肉や皮だけでなく骨以外はすべて活用し、大自然と調和していて、命は循環している。
舟に乗せてもらっての撮影ができたのは1991年から取材を重ねて村人たちとの強い絆を築いてきたからであり、ドローンを駆使した空撮と水中や舟上からの接写による鯨との死闘を撮った観たことのない圧倒的な映像をスクリーンで鑑賞することができて良かったが、これこそIMAXの大スクリーンと大音量で体験すべき作品。
他の方のベスト10で気になった作品。
メイキング映像を観て驚いた。
そりゃ7年かかるわな、というより、よく7年で撮ったなというくらい壮大で綿密で拘り抜いている。
7年後の次回作も期待してます。
阪元裕吾監督の作品だが、ノーチェックでした。
『ベイビーわるきゅーれ』よりこちらを推していることから間違いなくに面白そうだが、絶対にネタバレ厳禁ということで詳しくは聞けず、更に気になった。
シアターカフェに持って行く差し入れで、以前にご紹介したショコラトリー Chii•Luhaitme (チィ・リュエーム) のムースショコラを購入した。
ピカピカに光ったムースショコラは濃厚で滑らか。
中には塩キャラメル風味のムースが入っていて最高に美味しく好評だった。
お店はなく、豊田市にあるご自宅の蔵を改装した工房で作られていて八草駅で受け取ったのだが、お父さんが運転する車の助手席にはお母さんがいてご家族総出で配達していただいた。
車の中から何度も頭を下げてくださり恐縮です。
洋菓子屋で働くという選択をしないのは彼女は他人とのコミュニケーションに生きづらさを感じているからなのだろう。
無理せず自分のペースで美味しいケーキを作ってください。
私のベスト10の中では『あのこは貴族』も階層による生きづらさ (息苦しさ) を描いていて、上流階層では結婚相手は家柄と身分と家族の承認が大切らしく、嫁いだ先でも家柄を尊重しなければならない。
主人公は、生まれたときからプログラミングされているのでそれに何の違和感を持たないが、階層が違う女性との出会いが彼女を変える。
『あのこは貴族』の階層による生きづらさの続編として、国家レベルによるプログラミングをもろともせず、周囲や国民の反対も押し切って、金も儀式もクソくらえ、と生きづらさを打ち破って愛する人と結婚するという『あのこは皇族』が観たい。