2022.10.10 奈良公園バスターミナル レクチャーホール
臨月コンサート Tomoo&Saki 野上朝生 (pf) 野上(籠谷)紗希 (vln)
前回お聴きしたときはまだ同じ苗字ではなかったが、同じ苗字になっただけでなく、お子さんを宿されて大きくなったお腹にペインティングされてのコンサート。
出産予定日が10日後ということで、コンサート中に産気づいてもおかしくないのになぜこの日に?と思ったが、会場を押さえたときはまだ妊娠されていなかったとのこと。
もしかしたらTomooソロコンサートになっていたかも知れないが、絶対に大丈夫という根拠のない自信の下で無事開催された。
晴れの特異日なのに生憎の雨模様となったが、窓の外に見えるしっとりと濡れた奈良公園と遠くの山にたなびく霞が神聖さを醸し出し、新たな生命を神様から祝福されているかのようで、最初の一音の前にそっと目を閉じる紗希さんはその神様に感謝を告げているように見えた。
MCで話されていたコロナ禍で笑っちゃうくらい仕事がなくなったときに野外で即興演奏された時の動画。
本当は大ピンチなのにそれでも笑っていて、この日のライブでも演奏中に小さいお子さんの声がしたときにそちらを見て微笑むおふたりの姿が印象的だった。
『ハウルの動く城』のテーマ曲『人生のメリーゴーランド』のジャズアレンジのあとに「ともちんの想像がつかないアレンジが大好きで大好きで」と、紗希さん。
以前は「にょがみさん」と呼ばれていたが、自分も「にょがみ」になったので、「ともちん」に出世されたようだ。
朝生さんは、ジブリの曲をジャズアレンジしたCD「ジブリジャズ/All That Jazz」をリリースされていてシリーズ累計20万枚にもおよぶセールに、ライブ活動にも力を入れておられ、ジブリジャズの第一人者といえる存在。
前回の投稿で11月1日に開園するジブリパークについて書いたが、ジブリのキャラクターとして出てきそうなおふたりのライブを是非ジブリパークで聴いてみたい。
書家の桃蹊さんとのコラボでは、曲に合わせて、ときには台紙をバイオリンを奏でるかのように抱えて、ときにはピアノを弾くかのように向き合い、書き上がるまでのパフォーマンスにも魅了された。
星に向かって伸び、地中深く根を下ろす「LOVE」は生命力の源のように感じた。
「めっちゃいい~」と、紗希さん。
大学卒業までクラシックピアノを専攻していたが怖くなり人前で弾くことができなくなったそうで、ご自宅から運ばれたピアノで念願だったシューベルトを弾き終わったあと「人生を越えた気がする」と満面の笑み。
ピアノが弾けなくなったために細々と弾いていたバイオリンに本格的にシフトされ、プレッシャーから解き放たれたことで才能が開花されたのだろう。
常に楽しそうにバイオリンを弾かれている意味と、天上の調べのような清らかな音色の理由が少しわかったような気がした。
お母さんのことを想って書いた最初で最後の曲を弾き語りする朝生さん。
今日は泣かずに歌えたそうだが、お人柄が覗える歌声は少し震えていたようにも感じた。
この日のために限定で100枚準備されたCD-R。
100枚焼くだけでも大変だと思うが、丁寧なサインも添えられていた。
定価はなく金額はこちらで決めて、気持ちだけ置いて持っていっても大丈夫とのことだった。
帰りの車中で繰り返し聴きながら、お腹の中の愛ちゃんも一緒にステージに上がり、デュオだけれどもトリオとも言えるドラマチックなコンサートの余韻に浸った。
愛ちゃんを抱きかかえてのコンサート、楽しみにしています。