2022.12.28 センチュリーシネマ
三宅唱監督 『ケイコ 目を澄ませて』
毎年楽しみにしている白壁シアターカフェでの恒例イベント『映画コンパ!略して映コン!(シネコンじゃないよ) 2022年マイベスト10映画を語ろう編』の日程が2023年1月15日 (日) に決まり、今回も参加したいと思うので、オーナーの江尻さんよろしくです。
マイベスト10となっているが10本揃わなくてもOKで、何か面白い作品はないかと話しを聞きに来るだけでも大丈夫。
気軽に参加していただければと思う。
2022年も良い作品にたくさん出会えたが、間違いなくこれが1位と言える決定打が思い浮かばずどれにしようか迷っていたところ、年末に強烈なパンチを食らった。
生まれつき聴覚障害があり、何も聞こえない世界で、いじめにあい、不登校になりながらもプロのリングに上がった女性ボクサー小笠原恵子さんが書かれた『負けないで!』を原案にしたオリジナルストーリーで、静寂でありながら圧倒的な熱量をもった作品。
複雑なステップを踏んでエルボーブロックをしながら、ジャブ、フック、アッパーとリズミカルにパンチをミットに叩き込み「パン!パン!パン!」と乾いた音がに鳴る。
作り上げられた体とその動きは絵画のようで芸術作品であり、その鍛錬された音はどんな音楽よりも心に響く。
でも、その音はケイコには聞こえない。
ケイコの練習ノートを模したパンフレット。
「10月24日 (土) はれ ロード10km、ロープ2R、シャドー3R、サンドバック4R、ねらいすぎないように、流れで出していく.....」
逃げ出したくなっても、毎日の小さな積み重ねがやがて自信に繋がっていく。
「殺す気でやらないと負ける」とも書かれていて、それは対戦相手も同じで、耳が聞こえないハンディなど関係なく死に物狂いでかかってくる。
リングの上では健常者も障害者もない。
挑戦する心を持ったファイターがいるだけ。
「どうせ人はひとりでしょ?」と手話で話すが、拳を交えた者同士だからこそ分かり合えることがあるのだろう。
対戦相手のドラマも想像してしまう。
コメントを寄せている𠮷田恵輔監督の『BLUE/ブルー』は、ランキング下位の者が立つ青コーナーの青春を描いいて、ボクシングを題材とした映画の最高傑作なのだが、それと双璧の大傑作。
パンフレットの売り切れは満足度の高い作品のバロメーターである。
(再入荷したみたいです)
なぜ私がパンフレットを持っているのかと言うと、公開して直ぐに観ていて、この日が第2ラウンドだから。
あと何回かは下手なステップを踏みながら足を運ぶことになるだろう。