necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『ケイコ 目を澄ませて』第5ラウンド  『戦場のメリークリスマス』 4K修復版

 

2023.2.6 センチュリーシネマ

『ケイコ 目を澄ませて』 三宅唱 監督 ティーチイン付き上映会

 

 

第96回 キネマ旬報ベスト・テン

日本映画作品賞、主演女優賞、助演男優賞、読者選出日本映画監督賞

第77回 毎日映画コンクール

日本映画大賞、女優主演賞、監督賞、撮影賞、録音賞

その他、数々の受賞及びノミネートおめでとうございます。

 


第5ラウンドはリングサイドでの鑑賞。

上映後のティーチインでは三宅監督の丁寧な受け答えの中で、16mmのフィルムで撮影された春のやわからな光と、普段の生活で聞こえているはずなのに認識していない音を感じるためにも劇場で観るべき作品であると再認識した。

配信は好きではないのでソフトが発売されればもちろん購入するが、劇場で公開されている間はまた足を運びたい。

 

kariyanichigeki.com

 

愛知県内では2月10日(金) より刈谷日劇でも公開が始まり、まだまだロングランが続きそう。

大好きな劇場なので刈谷でケイコに会えるのを楽しみにしている。

 

 

その前日にセンチュリーシネマと同じ系列の伏見ミリオン座で『戦場のメリークリスマス』4K修復版 ビートきよし師匠の舞台挨拶付き上映会を鑑賞した。

 

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こちらは劣化したフィルムをデジタル修復することによって鮮明な映像にするのだが、それ以上に名作をデジタル保存するということに意味がある。

多くの自民党議員からすれば保存する価値のない作品であろうが、LGBTという言葉すらなかった40年以上前にこれを撮られた大島渚監督のセンスには驚くしかない。

大島監督は映画初出演の坂本龍一さんとたけしさんには演技指導はしなかったと記憶していて、あの印象的なラストの表情は監督の意図ではなくたけしさんの内面から出てきたものだろうと想像する。

ティーチインでもし私が指名されていたなら、ラストシーンでのケイコの印象的な表情が何を語っているかはそれぞれの感じた通りで正解は必要ないと思うが、監督が意図した表情なのか、それともその場で岸井ゆきのさんの内面から出てきた表情なのか、お伺いしたいと思っていた。

きよし師匠は1週間の撮影期間のうち最終日を除いて雨だったため出演がなくなってギャラだけもらって帰られたそうだが、デヴィッド・ボウイの生弾き語りをお聴きになられたとは羨ましい限りで、映画を持ち上げる気がまったくないオモシロトークには笑わせていただいた。

 

 

久しぶりに戦メリのサントラを聴きたくなったので、センチュリーシネマへ向かう前にレコードを持参してロジウラのマタハリの月曜レコード倶楽部へ。

 

 

日本で一番知られている映画音楽と言ってもいい程テーマ曲はあまりにも有名だが、すべての音楽が映像に溶け込んでいるサントラは映画音楽の極みである。

マタハリのオーナーりりこさんもカセットテープに録音してウォークマンで繰り返し聴いていたそうで、曲が流れるシーンもしっかり覚えているとのこと。

ジャック・セリアズ (デヴィッド・ボウイ) が ヨノイ大尉 (坂本龍一さん )の頬にキスをするシーンに流れる『Sowing The Seed』では涙を拭われていた。

映像と音楽の相乗効果は音楽がほぼない『ケイコ 目を澄ませて』とは対照的のように思えるが、練習や日常の音が音楽のように聴こえて映像に溶け込んでいるので同じように思えるし、人の心に種を植える作品という意味でも共通している。

 

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美尾りりこさんのFacebookより。

 

 

ベッドで横になっている会長に聞かせるために奥さん役の仙道敦子さんがケイコの練習日記を読むシーンでは、その言葉は歌っているように心地よく、リングに立つために積み重ねている日々の映像に溶け込んで、涙が流れる。

 

 

1月17日にリリースされた坂本龍一 さんのアルバム『12』。

録音した日付が曲のタイトルになっていて「日記を書くようにスケッチを録音していった。」「何も施さず、あえて生のまま提示してみる。」と記され「今後も体力が尽きるまで、このような「日記」を続けていくだろう。」と締めくくっている。