necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

がんとも

 

2023.5.27 シアターカフェ 『がんとも』

八十川勝監督 森野くるみさん 熊田佳奈子さん

 

 

『がんとも』とは、がんを通じてできた友達であり、がんとともに生きることでもある。

フィクションではあるが、主演の森野さんの実体験をもとにしており、がん患者の心情の揺れ動きやがん病棟での会話などはリアルで、どんなに辛くて悲しくても、お腹は空くし、可笑しければ笑う。

煎餅のシーン発想は実際に体験していないと思い浮かばないだろう。

日本人が生涯でがんに罹患する確率は2人に1人で、男女とも50代から増加し始め、60代になると男性の罹患率が一気に上昇するらしい。

年をとるイコールがんになりやすくなるということで、私もいつがんと診断されてもおかくしない年齢に突入しているが、自分は大丈夫という何の根拠もない思い込みで厭なものに蓋をしており、そういう私と同じような方はもちろん、主人公のように若くてもいつ直面するかわからないことであり、多くの方に観ていただきたい作品である。

がんになることで失うものは多いが、それと同じくらい、もしかしたらそれ以上に得るものもあり、そのことに気付くかどうかは自分次第なのである。

 

 

目から鱗で、何度も読み返している『限りある時間の使い方』にある一節。

「死が確実にやってくること、そして自分が死に向かっていることを見つめたとき、人は本当の意味で生きることを知るのだ。

 癌になった有名人が、きまって闘病体験を「すばらしい出来事だった」と語るのは、まさに人生の有限性に直面するからだ。みずからの死に直面したために、人生の見え方が変わり、あらゆるものが鮮やかな意味をもって立ち上がってくるのだ。

 死にかけた人が、それまでより幸せになるわけではない。そんな単純な話ではない。自分が死ぬという事実、そして自分の時間がとても限られているという事実を骨の髄まで実感したとき、人生は新たな奥行きが現れる。幸せというよりも、人生がよりリアルになるのだ。

 誤解しないでほしいのだけれど、病気や死に直面することが喜ばしいわけではないし、健康より価値があるといっているわけでもない。それは非常につらい体験だ。ただ、そういう体験をくぐり抜けた人たちは、時間との新たな関係、より誠実な関係を手に入れることが多い。」

 

 

劇中で「感じたまま生きたらいいんよ」「シンプルが一番ええんや…それで生きたらええねん」などの台詞が出てくる。

坂本龍一さんが闘病中に録音されたアルバム『12』。

テクニックがどうとか、良い曲にしようとか、売ろうというような邪念のない、まさに坂本龍一さんのそのままが録られた名作。

坂本さんもご自身がんになって良かったとは思わなかっただろうが、がんにならなければ生まれなかったであろう音は心に沁みわたってくる。

 

 

コノハコトノハさんが歌うエンディング曲が素敵だなと思っていたら、うれしいことにパンフレットにCDがついていて、しかも1000円とは超お得。

 

 

がん細胞は砂糖しかエネルギーに出来ないが、糖質制限ががんになるリスクを下げたりがんと診断されたあとの生存率を上げたりするものではなく、当然そのことはご承知されているはずだが、もしかして気にされているかもと思い、『和カフェらかんか』の上白糖を使っていないおはぎを差し入れに持って行った。

やはり要らぬ心配みたいでしたが。

 

 

数年前の人間ドックの腹部超音波検査で『膵嚢胞』が見つかり、診断書には要細密検査と書かれていたが、いまだにほったらかしている。

膵嚢胞には、放置しても大丈夫な炎症性のものや、癌化する可能性が高い腫瘍性のものなど様々な種類があり、検査結果によって治療方針が大きく変わるらしく、自分のためにもはやり精密検査は受けておかないと。