
『虹のかけら』
登壇者 波佐本麻里さん 野中朋子さん 小野木咲雪さん
主人公の母で認知症役の波佐本さんは若々しくスラリとした体型で、法事のシーンでキツい印象だった野中さんは飛び切りの笑顔だし、小6だった小野木さんは高3よりもう少し大人に見えて、みなさんスクリーンとはまったくの別人で、華やかな舞台挨拶。

前回から全員メンバーチェンジされて、パンフレットのサインも6名になった。
劇中でも個性豊かな面々が登場するが、中でも気になったのが会えない娘からもらったルービックキューブをいつもガチャガチャさせているルービックおじさん。

今年鑑賞した『ありふれた教室』は職員室での盗難という小さな事件を巧みな心理描写で一級品のサスペンスに仕上げた傑作だった。
その作品でもルービックキューブがあるメタファーとなっていて、母に疑いがかかっている少年が先生からもらったルービックキューブを全面揃えて机に置き、全部理解していてそれでも或いはそれだから僕は母を守ると無言の主張をする。
ルービックキューブには何か意味がある。
理屈を知らない者が全面揃えるのは至難の業で、全面揃えられたらもらった人に見せたくなる。
そのときは会いに来てほしいという父への無言のメッセージなのかも知れない。
前回、認知症による介護は多くの人に降りかかってくる可能性のある問題と書いた。
もっと壮絶な介護の現場はたくさんあるだろうが、それだと主題がブレてしまう。
65歳以上の5人に1人が発症するという認知症。
ありふれた介護の現場にすることによって、より身近な問題であると感じられる。
決して他人事ではない。

『呼吸』『グッド・バイ』『HEAVEN』
登壇者 岸本景子監督 野中朋子さん 小野木咲雪さん
18分の短編『呼吸』は、亡くなった夫の7回忌にその面影を追いながら過ごす女性を野中さんが演じる。
亡くなった者は年をとることはなく、夫と同い年になり、記憶も薄れていくが、それでも忘れなければその呼吸を感じることができる。
『虹のかけら』の2年前、小野木さんが小学4年生の時の作品で、そのお母さん役の野中さん。
新しい父親ができたことによって本当の父親と最後の時間を過ごすが、その貴重なひとときも仕事を優先してしまう父。
母のお腹には新しい父親との新しい命が宿り、自分の存在価値に心が揺れる。
生と死をテーマとする岸本監督ならではの切り口で、別れによって新たな自分が生まれる。
そんな良い別れだから「goodby」ではなく『good・by』。
岸本監督の初監督作品であり、生と死を扱う原点となる作品。
映画業界から距離をおいて法律を学んでいたときに一番興味を持った民法第30条の失踪宣告をモチーフに撮られた。
相続などの手続きを進めるのに必要な法律ではあるが、申請が済んだからといって死んだと割り切れるものではない。
兄の失踪宣告をする弟に対して「お前が殺した」と憤る母。
何もかも放り投げて逃げた兄の代わりを7年間続けてきた弟。
弟の最後の言葉に兄がいなかった7年間が凝縮されていた。
連日の舞台挨拶、みなさまありがとうございました!
岸本監督、お誕生日おめでとうございます!

シアターカフェの帰り道、月に一度の体組成計測定。
筋トレ開始から13ヵ月目。
初日から体重+0.2kg、筋肉量+3.0kg、体脂肪率-4.4%。
相変わらず数値は停滞しているが、運動は身体だけでなく脳にも良い。

高血圧の人は脳血管性認知症に、糖尿病の人はアルツハイマー型認知症になりやすいなど、生活習慣病は認知症の危険因子であり、運動することはその予防となり、脳の肥料であるBDNFを殖やしたり、脳の記憶をつかさどる海馬の細胞新生を促す効果もある。
運動をまったくされていない方は、まず生活の中に早歩きをする習慣を取り入れよう。
大切な人を忘れないために。