
2025.11.28 12.14 伏見ミリオン座
Ryuichi Sakamoto Diaries 大森健生監督
2023年3月28日に71歳で逝去された坂本龍一さんの最期の3年半を自筆の日記に加えて、貴重なプライベート映像と数々のアーカイブで綴ったドキュメンタリー。
映画の冒頭の語りは坂本さんが音楽を手掛けられたベルナルド・ベルトルッチ監督作品『シェルタリング・スカイ』で使われた言葉からの一節。
あと何回満月を眺めるか
せいぜい20回
だが人は無限の機会があるかと思う
何枚も撮られた満月の写真が儚げだった。
映画の原作者のポール・ボウルズは作品の完成後10年も経たずにこの世を去った。
中咽頭ガンが発覚してから2017年に発表したアルバム『async』に収録されている『fullmoon』はボウルズの一節をサンプリングし、同じ文章をさまざまな言語に翻訳して、それぞれのネイティブのアーティストに読み上げてもらっている。
一番最後にイタリア語で朗読しているのはベルトルッチ監督で、彼は曲の完成から1年後にはこの世を去っている。
世の中に何か絶対があるとしたならば、人は絶対に死ぬ。
『シェルタリング・スカイ』制作の当時坂本さんはは38歳で、ボウルズの言葉を必ずしも自分のこととして捉えていたわけではなかったそうだが、ガンが発覚してから自らのモータリティについて考えざるを得なくなり書かれた曲。

余命宣告を受けてからは治療よりも音楽活動を優先され、医師のスケジュール通りに治療していればもう少し長く生きられたかも知れないが、それよりも自分が成すべきことが明確に見えていたのだろう。
指に痛みや痺れがあり心身ともにボロボロの状態で弾かれた Opusでの『シェルタリング・スカイ』にこれまでの中で一番心を揺さぶられた。

日記帳を模したパンフレットには映画で使われた部分の日記も載っていてじっくりと目を通した。
途中から手書きの文字からスマホで入力した文字に変わり、文字を書くことも困難になったことが伺える。
人生に限りがあることは頭ではわかっていても実際に過ぎてみなければ時の経つ速さは実感できない。
坂本さんと同じ辰年のひとまわり下で60歳を過ぎた今、少しは実感できている。
今思うことは健康であるうちからモータリティを意識して生きるべき年齢になったということ。
あたかも一万年も生きるかのようにすべてを先送りしている自戒の念を込めて。
死を意識することで「今どう生きるか」が見えてくる。