necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

"INTO TOMORROW" SADAO WATANABE QUARTET 2026

 

2026.10.25 しらかわホール

"INTO TOMORROW"  SADAO WATANABE QUARTET 2026

渡辺貞夫 (as)  小野塚晃 (p)  三嶋大輝(b)  竹村一哲(ds)

 


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北名古屋市のカフェレストラン Honky-Tonk でランチをしていると、豊潤なサックスが流れてきて、暫し食べる手を止めて聴き入った。

ホレス・シルヴァーの名曲『PEACE』の穏やかで心安らぐ音色は、まさに平和への祈りのようで、あまりの素晴らしさに「誰が吹いているの?」と、中本マスターに尋ねると、「渡辺貞夫さん」とのことだった。

「ナベサダさん、お幾つになられるのだろう?」という話しになり、調べてみると、現在93歳で『PEACE』がリリースされたときは91歳とわかり、驚きしかなかった。

中学高校の頃、BRAVAS を振りかけて『カリフォルニア・シャワー』や『オレンジエクスプレス』などを聴きまくったのに、それ以降は殆ど聴いていなかった自分にガッカリしたが、有難いことにライブも現役バリバリでされているので、これからどんどん聴いて行けばいい。

ライブスケジュールをチェックすると2026年のツアータイトルに"INTO TOMORROW" とあった 。

今年デビュー75周年を迎えられ、普通ならば過去の功績や数々の名演奏を思い浮かべるところだが、”明日へ、未来へ、” これからどんな音楽を生み出していくのかを感じさせるタイトル。

折しもライブの2日前に令和8年度の文化功労者に選出され、受賞のお言葉にも「これからも変わらず、自分の音を求めて誠実に邁進してまいります。」と、未来に向けての思いが語られていた。

ご受賞おめでとうございます。

 

 

2階の中央席はカルテット全体の調和を聴くには適していて、舞台からの直接音に加え、天井から吊るされた音響反射体や左右の壁などから届く反射音が加わることで、4人の演奏が空間の中で響き合っていた。

素晴らしい演奏は技術的な話になりがちだが、何を表現したのかだけではなく、本当に大切なのはどのような体験をもたらしたかであり、聴いた人の心に何かが生まれるところに渡辺貞夫さんの音楽の真髄があるのだと思う。

それは、新しい勇気かもしれないし、静かな涙かもしれないし、忘れていた想いかもしれない。
早速来年3月の、ひこね市文化プラザでのチケットを購入したところ、表情や息づかいまでしっかり感じ取れる席が取れた。
94歳になられる渡辺さんの音楽を享受したい。
 

 

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レコーディングメンバーでもあるドラムの竹村さんは一足お先にお聴きしていて、小野さんと三嶋さんは初めてお聴きした。

さすが、渡辺さんが一緒にやりたいと思うメンバーだけあって、レジェンドを引き立てるのではなく、対等の立場で交わす生き生きとした対話に、技術があるだけでは得られない一体感が伝わってきた。

ひこね文化プラザも同じメンバーなのはうれしい。

 

 

ライブの帰りにジャズ茶房靑猫に寄って、今年の6月にリリースされた最新アルバム『BUT BEAUTIFUL』を掛けていただいていると年配のご夫婦が入って来られた。

 

 

しばらくして旦那さんが「スピーカーいい音ですね」とマスターに話しかけると、「録音と演奏がいいからだと思います」と返された。

坂崎拓也 “Bassless” Quartet  平手裕紀トリオ

 

2026.10.11 THE WIZ

坂崎拓也 “Bassless” Quartet

坂崎拓也 (harm) 成瀬明 (gt) 平手裕紀 ( pf, synth-b, tp) 山崎隼 (ds)

 


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ベーシストの坂崎さんが近年、クロマチックハーモニカ奏者としての活動的にも本格的に力をいれるようになって、初めてハーモニカライブに足を運んだ。

大きさといいプレースタイルといい、ベースとハーモニカは、楽器としての性格が大きく異なっていて、まったく違う手法で表現することに楽しさを感じておられるのだろう。

ジャズハーモニカの巨匠トゥーツ・シールマンスに、ジョン・コルトレーンのハーモニカアレンジや、オリジナルのバラードなど、繊細な極小音から芯のある強い音まで、温もりと哀愁のある音色に心揺さぶられた。

あえてベースレスとしたカルテットは、平手さんがピアノの上にシンセベースを置き、成瀬さんもベースパート意識したプレーで、まったくベースレスを感じなかった。

吹いているときの姿はもちろん、吹いていないときもカッコイイ。

 

 

坂崎さんがベースとハーモニカの二刀流なら、平手さんはピアノとトランペットの二刀流。

二刀流同士のつばぜり合いに、他のメンバーは思わず笑っていて、客席も笑顔の絶えない楽しいライブであった。

 

 

坂崎さんのアルバムは置いてなかったので、隼さんが参加した平手さんの師匠である水野修平さんのリーダーアルバム『Shuhei Mizuno with Strings』を購入。

地元名古屋から東京に拠点を移してから、ジャズにとどまらず、さまざまなジャンルのミュージシャンと演奏を重ねて益々スゴいドラマーになってます。

 

 

2016.10.12 春日井市市民会館大

平手裕紀トリオ

平手裕紀 (pf, tp,flp) 坂崎拓也 (b) 山崎隼 (ds)

 

 

翌日は平手さんの地元、春日井市民会館での平手裕紀トリオ。

活動拠点を東京に移した平手さんの活躍に、公益財団法人かすがい市民文化財団が企画された。

キャパ1000席の大ホールは、2歳半から通っていた音楽教室の発表会でもお世話になっていたそうで、凱旋ライブは大盛況。

前日のカルテットから成瀬さんの名前がないが、11月7にサポートで参加されるペンギンラッシュの初ホールライブも1300席の大ホールなので、どんなライブになるのか楽しみ。

 

 

会場はご家族連れや学生さんも多く、ジャズのライブが初めての方でも楽しめるように『枯葉』や『いつか王子様が』など、耳馴染みのある曲が多めのセットリスト。

地元ならではのルーツを知れるインタビュー記事と、会場を包んだ暖かい拍手に、地元から応援されているのがよくわかった。

インタビュー記事は QRコードからご覧いただけるので是非。

ペンギンラッシュもベースの浩太郎さんの地元である半田市の瀧上工業雁宿ホールでのライブで、いつもに増して浩太郎さんのスーパープレーがお聴きできそう。

 

 

前日に購入できなかった坂崎さんのハーモニカでのリーダーアルバム『 A CHILD IS BORN』を無事ゲット。

昨日は持ってくるのを忘れたのだと思っていたが、持ってきてはいたけどカバンから出すのを忘れて、MCで宣伝するのも忘れたそうだ。

そんなミュージシャンおれへんやろ~ チッチキチー。(by 大木こだま・ひびき)

リーダーとしてのご配慮だろう。

心もカッコイイ。

TwinPiano 高田ひろ子×栗林すみれ

 

2026.10.3 蕨 Our Delight

TwinPiano 高田ひろ子×栗林すみれ

 

 

高田ひろ子さんは、2013年にジャズ茶房靑猫で、初めて主催ライブをさせていただいたピアニスト。

栗林すみれさんは、私の力不足で実現には至らなかったが、生涯マイベストの企画になるライブをしていただく予定だったピアニスト。

つまり、私にとって夢の TwinPiano ともいえる組み合わせ。

高田さんは 生田流箏奏者である、すみれさんのお父さんとの競演をされたことがあるなど、お互いに知ってはいたものの、直接お会いされたのは昨年の飛騨高山ジャズフェスだったとのこと。

直接ライブを聴き合ってお互いに惹かれたものがあったのだろう。

須田マスターからTwinPianoのオファーを受けた高田さんがすみれさんを指名されたそうだ。

 

 

お二人とも自分が目立とうとするバトル的な演奏は一切なく、相手が今どんな音を出そうとしているのか、その美しさを理解したうえで自分の音を重ねたり、逆に引いたり、相手を引き立てることで、結果として自分自身の音楽も最高の状態にしているように感じた。

様々な聴きどころの一つは二人が弾いているところではなく、どちらかが音を止めた瞬間。

そして、もう一人が沈黙を受け取って置いた音。

もう一つは、どちらが弾いているのか分からなくなり、二人の音楽が一つの音楽になる瞬間。

ぶつかるのではなく、どんどん深くなっていく。

相手を深いところで信頼しているからこそ成立する TwinPiano。

Our Delight は向かい合うのではなく並んで弾くため、視線の動きがよくわかる。

とくに高田さんは譜面よりもすみれさんを見ている時間の方が長いのでは?と思えるくらい、アイコンタクトの他にも、指先の動きや表情を何度も見ては笑顔を浮かべられていた。

その笑顔は本当にうれしそうだった。

 

 

この日のセットリスト。

2ndの3曲目『Letting things flow』は、すみれさんが即興で弾いたものを譜面に書き起こしたナンバー。

すみれさんが過去の自分と会話し、高田さんがその会話に現在の自分として入ってくるようで、単に曲を聴いているのではなく、二人の音楽家が目の前で思考し、感じ、反応している過程を目撃しているような感覚。

 

 

一時期は他の方が経営されていたが、今年の5月から再び須田さんが経営を引き継いで復活した Our Delight。

詳しい事情は存じないが、復活おめでとうございます。

 

 

7年ぶりのアワデラで、「以前、こちらでライブを企画させていただいた者です」と、ご挨拶させていただくと「よく覚えているよ、名古屋のやつ」と、うれしいお言葉。

名古屋ではTwinPiano が聴けるジャズのハコはないし、ここのナチュラルリバーブの音響もリラックスできる雰囲気も大好きなので、また伺います。

 

 

そして、ここでのお二人の再演も熱望します。

OttO 『口蹄疫から生きのびた豚』

 

2026.10.3 OttO

『口蹄疫から生きのびた豚』

 

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全国ミニシアター巡り18館目 (地元愛知県を除く) 埼玉県大宮市 OttO。

今年の2月に東京の田端にある CINEMA Chupki TABATA に伺った際、スタッフの方にお勧めのミニシアターをお聞きしたところ、 OttO をご紹介してくださり、Chupki のメンバーだった方も働いているとのこと。

初めて耳にしたミニシアターだったので検索してみたところ、2025年4月にオープンしたばかりで、カフェとシェアハウスも併設しているということで、かなり面白そう。

 

 

受付で「元 Chupki TABATA の方がいるとお聞きしたのですが」とお尋ねすると、「僕です」と満面の笑みを堪えていただいた柴田さん。

ピンボケでスミマセン。

映画好きがにじみ出ていて、物腰の柔らかい感じが、閉館してしまった刈谷日劇の渋谷さんと同じ匂いがした。

渋谷さんお元気かな?

 

 

3階から5階にシェアハウスが25室あり、本格的なカフェは映画の待ち時間に利用するだけでなく、映画を観ない方でもお茶や食事をするために寄りたくなる空間である。

 

 

カウンター席から少し降りるとテーブル席もあり、ゆったりと過ごすことが出来る。

出町座のソコではひと手間かけた美味しいランチに驚いたが、ここでは本格的なピザメニューが充実ていて、次回はマルゲリータをいただきたい。

 

 

この日は時間に余裕がなかったので、あんバターをいただいた。

たっぷりのあんと分厚いバターは名古屋の人気店「あんバターは名古屋のもの」と似たフォルムで、美味しいに決まっている。

 

 

オーナーの今井さんもピンボケでスミマセン。

Chupki TABATA の平塚さんとは懇親の間柄だそうで、OttO オープンにあたっての主戦力として柴田さんが Chupki から送り出されたのだろう 。

ベビーカーのまま入れる防音親子観賞室に、車椅子スペース、聴覚補助システムなどがあり、誰もが映画に出会える場所というChupki のコンセプトを継承しつつ、映画と人が新しく出会う場所にもなっている。

映・食・住、画期的で魅力のある店舗は、これからのミニシアターの様々な可能性を教えてくれる。

 

 

50席ほどの客席は、前の席との段差が十分にあって、座り心地も良く、素晴らしい音響で、まったくストレスなくどっぷりと映画の世界に浸れた。

 

 

最前列にはふたり掛けのソファーが4席あり、ひとりでも通常料金で座れるそうだ。

次回、上映開始ギリギリに入って空いていたら寝転んで観よう。

 

 

『口蹄疫から生きのびた豚』を鑑賞。

名古屋ではセンチュリーシネマで上映していたみたいだが、まったくノーチェックでスミマセン。

時間がたまたま合ったのがこの作品で良かった。

 


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生きるために人間になりたい豚と、人間社会に絶望して獣になりたいと思う男。

ここには人間とは何か?という問いがある。

人間であることは本当に尊いことなのか?獣になることは卑しいことなのか?

豚と人間の境界線をぐちゃぐちゃにしていき、人間ではないものの目を通して、人間を見ている感覚になり、人間であることの残酷さを、豚の側から見せられた。

そこには、様々な対立と、弱いものが追い詰められ、さらに弱いものを追い詰める構造が見えてくる。

 

 

豚は人間から虐げられているのに、その人間になろうとする。

そこには、強いものに憧れるという単純な話ではなく、自分が殺される側なら殺す側になればいいという発想にも繋がってしまい、人間社会の非常に危険な部分を映しているように感じた。

 

 

映画配給会社マーチの田辺さんのアフタートーク。

先日伏見ミリオン座で鑑賞した『沼影市民プール』の聖地巡礼をする予定だったが、自分の中で消化しきれない衝撃的な作品だったので、お話を伺いたくなり予定変更。

OttOに集うみなさんの映画リテラシーの高い様々な角度からの感想と質問になるほどと思い、田辺さんの丁寧で的確な返答に、かなり腑に落ちる部分があり参加して良かった。

苦しみの中で、人間になっても、獣になっても、簡単な救いにはならない。

答えがないのが答えで、自分で引き受けるしかない。

 

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『沼影市民プール』は OttO で、12月24日(木)〜1月6日(水)※12/30~1/1休館 で上映されるので、是非。

現実を記録するだけでは届かないところまで近づこうとするドキュメンタリーで、プールに通っていた地元の方が観ると感慨深いのだろうな。

沼影市民プール

 

2026.9.20 伏見ミリオン座

『沼影市民プール』

舞台挨拶 太田信吾監督 竹中香子プロデューサー

 

 

太田監督とお話しさせていただいたのは2014年8月23日ポレポレ東中野で鑑賞した『わたしたちに許された特別な時間の終わり』以来。

「映画を完成させてね。できればパッピーエンドで」

太田監督の友人でプロミュージシャンを目指していた増田壮太さんが遺した言葉。

彼の音楽活動を撮影しながら映画を作ろうとしていた制作途中、2010年12月に増田さんは27歳で自ら命を絶たれた。

「自分は現実を撮っている」と思い込まない。

自分がカメラを向けた瞬間から、現実は変わってしまうのではないか。

ドキュメンタリーは現実をそのまま撮るだけではないという監督の原点を知ることができる作品で、本作では「人間の死」を撮るだけでなく「残された人間」を撮っていた。

 


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そして『影沼市民プール』でもプールの解体という「建造物の死」を撮るだけでなく「残された人間」を撮っている。

プールの閉鎖・解体をひとつの死として描いていて、否認・怒り・取引・抑うつ・受容、というキューブラー・ロスの「死の受容の5段階」をモチーフとし、大切なものを失うとき、人は何を感じ、どう受け入れていくのか、をテーマとしている。

 

 

市民プールというより、ウォーターアミューズメントパークといえる巨大施設で、そこに通っていた人の記憶、孤独、出会い、生活まで含めて、地域住民にとってはなくてはならない居場所であって、建物を壊すことは単にコンクリートを壊すことではなく、人と人との関係が生まれていた場所を壊すことである。

そして、その喪失感を単なるノスタルジーにするのではなく、失われるものの中に、まだ生きている人間を見つめている。

 

 

学校建設という都市計画との関係も描かれていて、閉鎖に反対する署名が1万人以上に及んだが、結論ありきの行政の計画は一度進み出したら立ち止まることすらしない。

ラストシーンを見るとせめて延命措置くらいはできたのではないかと思える。

それは単純に、行政は悪くて市民が正しいという告発映画にはしておらず、街をつくるとは?という問いになっている。

舞台挨拶では、名古屋の都市開発について教えて欲しいということだったので、サイン会の際に、となりの瀬戸市の愛知万博の開催場所の変更について少しお話しさせていただいた。

当初は瀬戸市の海上(かいしょ)の森、約540haを大規模に開発るす計画だったが、オオタカの営巣やシデコブシの生育などが確認されたことを契機として、地域住民や自然保護団体などが会場計画の見直しを訴え、自然の開発ではなく既存の施設を活用することにし、158haまで大幅に規模を縮小して長久手市の愛知青少年公園(現、愛・地球博記念公園・ジブリパーク)がメイン会場となった。

地域住民が国家的プロジェクトを大幅に変更させ森の死を免れたことに、太田監督の目が一瞬見開いた。

 

 

私が撮った海上の森。

kino cinema 心斎橋 『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

 

2026.9.18 kino cinema 心斎橋

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

 


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ベトナム帰還兵であるアレン・ネルソンが小学校でベトナム戦争での実体験を語ると、険しい瞳で「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」と少女が質問する。

戦争を題材にした作品を鑑賞する度に16歳のときに観た『地獄の黙示録』のパンフレットにあった黒澤明監督の《アポカリプス・ナウ》についてのコメントを思い出す。

そのコメントより一部抜粋。

「恐怖は、人間を支配し、異常な状態に追い込む。戦場で人間が、異常に勇敢になるのも、残虐になるのも、また奇妙な事に熱中するのも、すべて恐怖から逃避するためだ。戦場は地獄だから怖いのではない。戦場では、時に地獄が天国に見えるから怖いのだ。そう云う人間と云うものが怖いのだ。」

 

 

戦争の残虐さをしっかりと描いているからこそ、帰還後のPTSDの苦しみもしっかりと伝わってきて、その治療の過程で「なぜ君は人を殺した?」という問いを診察の度に何度も繰り返し聞かれ、表面的な説明や記憶の奥から出てきた本心に、戦争が人間の内面をどう変えてしまうのかを突きつけられた思いがした。

 

 

予告編の中でベトコン兵士の捕虜が「なぜ他の国に来て我々を殺すんだ アメリカで戦え 真の自由のために」と云う。

ネルソンの所属する最前線の部隊は殆どが黒人で、少数いる白人やヒスパニック系は貧困者である。

戦争は突然人を別の生き物に変えるのではなく、社会全体が少しずつ人を殺すことが許される状況を作ってしまうところから始まる。

そして戦争を始める奴らは決して最前線に立つことはない。

戦争を語り継ぐ人が少なくなって行く中で、映画の果たす役割はより重要になっている。

 

 

全国ミニシアター巡り17館目 (地元愛知除く) キノシネマ心斎橋。

アメリカ村にある BIGSTEP の4階に2024年12月オープンした新しくファッショナブルなミニシアター。

愛知はミニシアターが減っていくばかりなので羨ましい限り。

 

 

100席ほどのスクリーンが2つあり、この日は一日中どちらかで上映していて、私の観た回は満席で、おそらく次の回も満席だったと思われる。

小さめのロビーはずっと人がごった返していて、館内の様子を撮ることができないほどだった。

今作の公開直前にキノシネマズの諸般の事情により公開規模が縮小され、関東、関西、九州のキノシネマ6館と沖縄3館の計9館のみの上映となった。

地元愛知も伏見ミリオン座での公開が中止となったが、SNSなどで上映を望む声が高まっている。

これだけ話題になって、これだけお客が入って、全国に観たい方がたくさんいるのに、全国拡大公開しないとしたら、その諸般の事情とは一体何だろう。

観賞前から全国拡大公開を望んでいたが、観賞してその思いはより一層強くなった。

アップリンク京都 『レンタル家族』

 

2026.9.12 アップリンク京都

『レンタル家族』 上坂龍之介監督

 


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新宿にある K's cinema わずか1館、1週間限定で公開され、全上映回が満員御礼となり、口コミで評判が広がって全国規模で公開されている『レンタル家族』。

同じようにたった1館から全国へ広がった映画に『侍タイムスリッパー』、2館からメガヒットした映画に『カメラを止めるな!』があるが、どちらもエンターテインメント性に富んだ作品で、若者を中心に口コミで広がった理由がわかるが、『レンタル家族』のように高めの年齢層が観ると思われる地味めな作品がヒットしているのは異例だし素敵な現象である。

今年公開された『レンタル・ファミリー』はレンタルされる側の視点で撮られているのに対して、レンタルする側の視点が中心になっていて比較して鑑賞するのも面白い。

社会が本物としている家族関係の中にも孤独があり、借り物の関係の中にも本物の感情が生まれてくる。

レンタルされる側にも事情があり、言葉ではなく表情や雰囲気での心理描写が素晴らしく、オムライスのシーンや歯磨きのシーンなど何度も心を動かされた。

『侍タイムスリッパー』は公開当初パンフレットは作られてなかったが、『レンタル家族』もパンフレットの作成をしていただきたい。

そのためにももっとヒットしていただきたいし、また観に行きます。

 

 

深田晃司監督の『東京人間喜劇』や『ジェファソンの東』に出演されていた荻野友里さんが主演されているというのも『レンタル家族』を見逃せないと思った理由の一つで、とくに『東京人間喜劇』は衝撃を受けた大好きな作品で、好き過ぎて自分で上映会を主催させていただいたほど。

 


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フランスの文豪バルザックの小説群『人間喜劇』に着想を得た作品で、『白猫』『写真』『右腕』の3つのエピソードで構成されていて、荻野さんは『写真』でのメインキャストだった。

その『写真』を、食パンをモチーフにした造形物を制作して個展も開いている芸大生に観せたいと思いコエタロという喫茶店でも上映会をしたが、その日は彼女の都合が合わず別のところで鑑賞していただいたため、まさに『写真』のような状況になってしまったのは今となってはいい思い出。

荻原さん演じる陽子がファミレスで離婚した夫と夫が引き取った娘と合うシーンで「白猫」と言っていたように聞こえたが、次回確認してみたい。

 

 

全国ミニシアター巡り16館目(地元愛知除く)のアップリンク京都。

アップリンク系列は吉祥寺には伺っており、館内のコンセプトは統一されている感じで、デザイン性が高い現代的なミニシアターそのものがアート空間になっている。

 

 

新風館というモダンな商業施設の地下にあり、少し早めに行って新風館を散策するのもオススメである。

 

 

館内には4つのスクリーンがり、最大73席、最小38席と比較的小さめな感じで、7月に水谷豊さんが自ら企画・監督・脚本・プロデュース・主演の1人5役を務められた自主制作映画『Piccola felicità(ピッコラ・フェリチタ)〜小さな幸せ〜』で舞台挨拶された際の様子。

チケットを購入したが都合が合わなくなり、京都の友人のイラストレーター、ナカガワ暢さんに代わりに行っていただいた。

名古屋では東別院で上映会が開催されただけで劇場公開はなく、単館系作品の公開時期が遅くなったり公開されない作品もあったりと、名古屋のミニシアター事情は本当にヤバい。

 

 

その暢さんとアップリンクへ行く前に出町座のソコでランチ。

映画の感想も伺って、水谷さんは「カルフォルニア・コネクション」も歌われたそうで、舞台挨拶行きたかったなー。

『Piccola felicità(ピッコラ・フェリチタ)〜小さな幸せ〜』はまだ鑑賞できていない。

 

https://www.facebook.com/non.nakagawa/posts/pfbid09oxVT48hPS3jBPkByMb8GNPKw7LkfZM3pnS29dBiRnD75fXEZc38PQxNgCsyEPQQl

 

ランチの様子は暢さんの Facebook をお読みください。