necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

kino cinema 心斎橋 『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

 

2026.9.18 kino cinema 心斎橋

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

 


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ベトナム帰還兵であるアレン・ネルソンが小学校でベトナム戦争での実体験を語ると、険しい瞳で「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」と少女が質問する。

戦争を題材にした作品を鑑賞する度に16歳のときに観た『地獄の黙示録』のパンフレットにあった黒澤明監督の《アポカリプス・ナウ》についてのコメントを思い出す。

そのコメントより一部抜粋。

「恐怖は、人間を支配し、異常な状態に追い込む。戦場で人間が、異常に勇敢になるのも、残虐になるのも、また奇妙な事に熱中するのも、すべて恐怖から逃避するためだ。戦場は地獄だから怖いのではない。戦場では、時に地獄が天国に見えるから怖いのだ。そう云う人間と云うものが怖いのだ。」

 

 

戦争の残虐さをしっかりと描いているからこそ、帰還後のPTSDの苦しみもしっかりと伝わってきて、その治療の過程で「なぜ君は人を殺した?」という問いを診察の度に何度も繰り返し聞かれ、表面的な説明や記憶の奥から出てきた本心に、戦争が人間の内面をどう変えてしまうのかを突きつけられた思いがした。

 

 

予告編の中でベトコン兵士の捕虜が「なぜ他の国に来て我々を殺すんだ アメリカで戦え 真の自由のために」と云う。

ネルソンの所属する最前線の部隊は殆どが黒人で、少数いる白人やヒスパニック系は貧困者である。

戦争は突然人を別の生き物に変えるのではなく、社会全体が少しずつ人を殺すことが許される状況を作ってしまうところから始まる。

そして戦争を始める奴らは決して最前線に立つことはない。

戦争を語り継ぐ人が少なくなって行く中で、映画の果たす役割はより重要になっている。

 

 

全国ミニシアター巡り17館目 (地元愛知除く) キノシネマ心斎橋。

アメリカ村にある BIGSTEP の4階に2024年12月オープンした新しくファッショナブルなミニシアター。

愛知はミニシアターが減っていくばかりなので羨ましい限り。

 

 

100席ほどのスクリーンが2つあり、この日は一日中どちらかで上映していて、私の観た回は満席で、おそらく次の回も満席だったと思われる。

小さめのロビーはずっと人がごった返していて、館内の様子を撮ることができないほどだった。

今作の公開直前にキノシネマズの諸般の事情により公開規模が縮小され、関東、関西、九州のキノシネマ6館と沖縄3館の計9館のみの上映となった。

地元愛知も伏見ミリオン座での公開が中止となったが、SNSなどで上映を望む声が高まっている。

これだけ話題になって、これだけお客が入って、全国に観たい方がたくさんいるのに、全国拡大公開しないとしたら、その諸般の事情とは一体何だろう。

観賞前から全国拡大公開を望んでいたが、観賞してその思いはより一層強くなった。

アップリンク京都 『レンタル家族』

 

2026.9.12 アップリンク京都

『レンタル家族』 上坂龍之介監督

 


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新宿にある K's cinema わずか1館、1週間限定で公開され、全上映回が満員御礼となり、口コミで評判が広がって全国規模で公開されている『レンタル家族』。

同じようにたった1館から全国へ広がった映画に『侍タイムスリッパー』、2館からメガヒットした映画に『カメラを止めるな!』があるが、どちらもエンターテインメント性に富んだ作品で、若者を中心に口コミで広がった理由がわかるが、『レンタル家族』のように高めの年齢層が観ると思われる地味めな作品がヒットしているのは異例だし素敵な現象である。

今年公開された『レンタル・ファミリー』はレンタルされる側の視点で撮られているのに対して、レンタルする側の視点が中心になっていて比較して鑑賞するのも面白い。

社会が本物としている家族関係の中にも孤独があり、借り物の関係の中にも本物の感情が生まれてくる。

レンタルされる側にも事情があり、言葉ではなく表情や雰囲気での心理描写が素晴らしく、オムライスのシーンや歯磨きのシーンなど何度も心を動かされた。

『侍タイムスリッパー』は公開当初パンフレットは作られてなかったが、『レンタル家族』もパンフレットの作成をしていただきたい。

そのためにももっとヒットしていただきたいし、また観に行きます。

 

 

深田晃司監督の『東京人間喜劇』や『ジェファソンの東』に出演されていた荻野友里さんが主演されているというのも『レンタル家族』を見逃せないと思った理由の一つで、とくに『東京人間喜劇』は衝撃を受けた大好きな作品で、好き過ぎて自分で上映会を主催させていただいたほど。

 


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フランスの文豪バルザックの小説群『人間喜劇』に着想を得た作品で、『白猫』『写真』『右腕』の3つのエピソードで構成されていて、荻野さんは『写真』でのメインキャストだった。

その『写真』を、食パンをモチーフにした造形物を制作して個展も開いている芸大生に観せたいと思いコエタロという喫茶店でも上映会をしたが、その日は彼女の都合が合わず別のところで鑑賞していただいたため、まさに『写真』のような状況になってしまったのは今となってはいい思い出。

荻原さん演じる陽子がファミレスで離婚した夫と夫が引き取った娘と合うシーンで「白猫」と言っていたように聞こえたが、次回確認してみたい。

 

 

全国ミニシアター巡り16館目(地元愛知除く)のアップリンク京都。

アップリンク系列は吉祥寺には伺っており、館内のコンセプトは統一されている感じで、デザイン性が高い現代的なミニシアターそのものがアート空間になっている。

 

 

新風館というモダンな商業施設の地下にあり、少し早めに行って新風館を散策するのもオススメである。

 

 

館内には4つのスクリーンがり、最大73席、最小38席と比較的小さめな感じで、7月に水谷豊さんが自ら企画・監督・脚本・プロデュース・主演の1人5役を務められた自主制作映画『Piccola felicità(ピッコラ・フェリチタ)〜小さな幸せ〜』で舞台挨拶された際の様子。

チケットを購入したが都合が合わなくなり、京都の友人のイラストレーター、ナカガワ暢さんに代わりに行っていただいた。

名古屋では東別院で上映会が開催されただけで劇場公開はなく、単館系作品の公開時期が遅くなったり公開されない作品もあったりと、名古屋のミニシアター事情は本当にヤバい。

 

 

その暢さんとアップリンクへ行く前に出町座のソコでランチ。

映画の感想も伺って、水谷さんは「カルフォルニア・コネクション」も歌われたそうで、舞台挨拶行きたかったなー。

『Piccola felicità(ピッコラ・フェリチタ)〜小さな幸せ〜』はまだ鑑賞できていない。

 

https://www.facebook.com/non.nakagawa/posts/pfbid09oxVT48hPS3jBPkByMb8GNPKw7LkfZM3pnS29dBiRnD75fXEZc38PQxNgCsyEPQQl

 

ランチの様子は暢さんの Facebook をお読みください。

丸竹夷 47都道府県ツアー 京炎一閃

 

2026.9.12 KYOTO MUSE

丸竹夷  47都道府県ツアー 京炎一閃

姫花 (vo,gt) 莉音 (ba) 紅留美 (ds)

 

 

7月5日、下北沢での推しのライブへ向かう前に駅前での路上ライブに足を止めた。

47都道府県ツアーの文字にちょっと興味をもって投げ銭箱を探したが見当たらない。

すると同じ装いの女子がすっと寄ってきて「7月18日に東京でライブがあるのでよかったら」とチケットを差し出したので「東京の人間じゃないのでごめんね」と断ってから日程を見ると、京都は行けそうだったので、投げ銭の代わりに京都のチケットを購入した。

 


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名古屋のライブ動画などをチェックしていると『BOØWYのBAD FEELING 19歳ガールズバンドが弾いてみた』のXの投稿が炎上していて、気に入らないなら見なければいいだけなのに、演奏がどうだの権利関係がどうだの大きなお世話である。

 

 

その『BAD FEELING』のギターリフが始まって盛り上がったところで演奏が止まってしまい機材トラブルか?と思ったところドラムの紅留美さんがケガをしたとのこと。

「誰か BAD FEELING のドラムを叩ける方はいませんか?」と、何度も客席に呼びかけると、舞台袖からBOØWYのドラマー高橋まことさんが登場した。

ビッグサプライズに会場のボルテージは最高潮となり、演奏後の高橋さんの「上手くなった」との一言は心からの言葉に間違いない。

1年前のライブ動画も観ていたが別人級の上達ぶりだった。

 

 

47都道府県、全54公演の千秋楽、衣装替えの時間にこれまでの全国行脚の様子がスクリーンに映し出された。

こういった演出もお見事。

 

 

同級生ならではのチームワークの好さと、観客を巻き込む圧倒的な一体感が大きな魅力で、ライブの数を重ねるごとに血となり肉となり鍛えあげられたライブパフォーマンスは十代とは思えないほどだった。

初めてこのハコでライブをしたときは友人や身内をかき集めても半分も埋まらず、店長に次のライブではパンパンにすると言った通りに SOLD OUT のパンパン状態。

コンテストにも積極的に参加していて、「OTOGULA LIVE in CANADA 2026」で優勝して8月にカナダでのステージに立ち、 世界規模の大会「HARD ROCK RISING 2026」では既に日本代表のTOP3に選ばれていて、9月23日の最終審査で1位になれば日本代表として世界大会へ進むことになる。

SNSでいろいろと書かれていることについては、「いちいち反論するのは時間の無駄で結果で黙らせる」みたいなトークもあり、くちだけネット民より大人の対応の有言実行バンドである。

 

 

ど根性ガエルは小学生のときに何冊がコミックを買った好きだった漫画で、若い方はあまり知らないと思うが、ど根性ガエルのような不屈の精神で音楽をやっているということでのコラボだろうし、会場には若者だけでなく私の他にもおっさん世代も居て、BOØWYのカヴァーもそうだが幅広い年齢層をターゲットにしているのだろう。

その辺りのセルフプロデュース力もさすがで、5年後のアリーナライブも有言実行でやっちゃいそうな気がする。

AMANE TRIO Acoustic Day

 

2026.9.4 THE WIZ

AMANE TRIO  Acoustic Day

伊藤天音(pf)  笠井亨(b)  崎田治孝(ds)

 

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天音さんが音大生のときにバイトをされていた THE WIZ での久しぶりのライブ。

記事にしたソロピアノの翌年に、渡辺翔太さんと梅井美咲さんの2台ピアノ『Live North Bird』でのオープニングアクトをお願いしていて、休憩時間のBGMに『North Bird』が流れていたのは天音さんのリクエストなのかな?

 

 

このトリオでの初のアコースティックライブだそうで、フライヤーもエレクトリック。

 


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SOLD OUT で行けなかった 7月の jazz inn Lovelyではエレクトリックでの『FOCUS』。

この日のアコースティックバージョンでは、エレクトリックで培ったグルーヴ感が存分に生かされていて、どちらもやることで音楽の幅が広がって行くのだろう。

エレクトリックとアコースティックの両刀遣いと言えばまずチック・コリアの名前が浮かび、フライヤーもチックの超名盤『Now He Sings, Now He Sobs』を意識しているように思える。

チックをサポートした歴代のベーシストにスタンリー・クラーク、ジョン・パティトゥッチ、アヴィシャイ・コーエンらがおり、彼らはウッドとエレキ共に凄腕である。

同じベースと呼ばれる楽器でも奏法はまったく別もので、どちらも凄腕のベーシストはそうそういない。

その意味でどちらも卓越している笠井さんはこのトリオにマッチしている。

ふたりの先輩と年齢差のある天音さんをリズムだけでなく、ライブ全体の流れも支えている崎田さんもこのトリオにマッチしている。

これまでライブでのトークを一度も聞いたことのない笠井さんと、ほんわかしている天音さんに、弁が立つ崎田さんは欠かせない存在。

絶妙なバランスのトリオはピンクの統一感も絶妙。

 

 

SAPPORO CITY JAZZ では、「コンテスト馴れしているので」と余裕をかましながら、キーボードを楽屋に忘れてステージに立ったり、決めごとを忘れて一番の聴かせどころを弾かずに終了してステージを降りるまで気付かなかったり、それでいてケロッとしていて、長嶋茂雄終身名誉監督を彷彿させるエピソードに大物感が漂う天音さん。

 


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SAPPORO CITY JAZZ では唯一トラブルなしに演奏できたという『Cookei』。

この日も鉄板のショーン・マーティンなどのカヴァーもあったが、オリジナルナンバーを中心とした構成で、これまで演奏力とアレンジ力の高さは承知いていたが、心に残るキャッチーなメロディや印象的な展開もあり、ソングライティング力の高さも感じるライブであった。

 

 

元バイトらしく、MCでは WIZ 名物の「モッツァロマーナ」をお勧めするなど、料理の美味しさについて何度も話されてお店の売り上げにも貢献されていた。

まじ、WIZ はどれを食べても美味しい。

左利きの少女

 

2026.8.26 伏見ミリオン座

『左利きの少女』

 


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台湾社会に残る家父長制や男性中心主義の抑圧、貧困の連鎖と学歴社会による壁、左手は悪魔の手という古い因習などを、幼い少女の視線から鮮やかな色彩で描かれていて、今年観た中でベスト級の作品。

 

 

イージンの母親シューフェンはシングルマザーで、10年前に多額の借金を残して失踪した余命幾ばくもない重病の元夫を必死に看病して葬儀代まで支払い、麺屋台の家賃の支払いを滞納するほどの金銭的に苦しい生活。

両親は三姉妹の下にいる唯一の息子が設立した会社には出資してマンションも息子名義にするが、嫁いだ娘がお金に困っていてもびた一文貸す金はないと言う。

 

 

イージンの年の離れた姉イーアンは高校時代に学年トップ3に入るほどの秀才で、周囲から女神と称される存在だったが、家庭の深刻な経済的困窮により高校を中退せざるを得なかった。

本来なら一流大学へ進学して社会的な成功を収めるはずが、学歴社会のルートから脱落し、台北の夜市の片隅での生活を送る。

 

 

5歳のイージンは祖父から「左手は悪魔の手」という古い因習を繰り返し言われ、悪魔の左手を自ら封印する。

何気なく大人の会話を聞いているだけのようで、子供ながらに家にお金がないこと、貴重品を質屋に持って行けばお金になることを理解し、家族のために悪魔の左手の封印を解いてある行動に出る。

 

 

母娘3人がそれぞれに生きづらさを抱えながらも懸命に生きている中、予期せぬ展開に続くエンディングで、夜市の屋台に灯る提灯のようなやさしい希望の灯りが胸の奥で灯った。

結末を知っての2回目の観賞では、1回目で何気なく観ていたシーンや表情に深い意味を感じ、少なくとも2回は観るべき作品。

音楽ではないある音が流れるエンドロールも素晴らしかったし、3人を見守ったジョニー、ありがとう!

 

 

祖母の還暦パーティーでもイーアンのバイト先だった店主夫婦がやってきて、とんでもない男尊女卑の発言をするシーンがある。

映画から少し離れるが、先日リヒテンシュタイン侯爵家は、これまでの男子優先の継承制度を絶対長子相続へ変更すると発表し、今後は男の子でも女の子でも、第一子が継承者になるということになった。

ちなみに、スウェーデン、ベルギー、オランダ、ノルウェー、デンマーク、イギリスなどでは、すでに女性が王位を継承できる制度になっていて、現在のヨーロッパの君主国では、日本のように女性は絶対に君主になれないという制度は、ほぼなくなった。

7月に成立した改正皇室典範では、旧11宮家の男系男子を皇族の養子にできる制度が設けられ、愛子さまは天皇陛下の第一子で1親等なのに現在は皇位継承資格がなく、旧宮家の男性には36~38親等離れた人まで制度上の道が開かれたことになる。

日本はいつまで男尊女卑を続けるのか。

 

 

Tシャツはピンクは完売でイエローはラストの1枚だった。

そりゃ映画を観たら欲しくなりますわな。

再入荷の予定はないとのことで、Lサイズが欲しかったがMを購入。

着てみたところ大丈夫だったので、これを着て3回目へ行きます。

 

『道草キッチン』聖地巡礼

 

高松市で『HOLD UP MORNING』を鑑賞して『本を綴る』と『ジュンについて』の聖地巡礼をしたあと、徳島に移動して『道草キッチン』の聖地巡礼。

 


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中江有里さん演じる桂木立は、都会で母親から継いだ小さな喫茶店を営む50歳の独身女性。

街の再開発による立ち退きに健康不安が重なって将来を見失ってしまったある日、徳島県吉野川市から届いた相続の通知を切っ掛けに移住した先で、自分の過去や喪失感と向き合い、さまざまな事情を抱えながら暮らす地元の人々や、日本で懸命に生きるベトナム人たちと出会い、自然の恵みを生かしたベトナム料理を囲む温かな時間の中で、新たな一歩を踏み出す姿を描いている。

人口減少や人手不足が進んでいる徳島ではベトナム人をはじめとする外国人住人は地域社会を支える大切な存在になっていて、それは日本のどこにでもある社会問題の縮図であり、同じ土地で暮らす人同士が食卓を囲み、お互いを理解していく様子も丁寧に撮られていた。

 

 

希望と不安を抱きながら立が降りた鴨島駅。

 

 

立が泊まった HOSTEL OE。

駅から歩いて直ぐで駐車場も完備されている。

映画と同様に奥さんがベトナム人の若いご夫婦が経営されていた。

 

 

立が泊まった部屋に泊まりたい思い、和室でふとん2組の部屋をネット予約して、受付の際に映画の撮影で使われた部屋について尋ねるとビンゴ!だった。

ラッキー!

 

 

HOSTEL OE では、お洒落なラウンジに屋上からの眺めなど、スクリーンで観たいくつものシーンがそこにあり、白羽監督と中江さんのサインなど、映画が残していったものがいくつもあって、道草の世界にどっぷりと浸った。

 

 

HOSTEL OE の前の通りでは、圧倒的なスケールと熱気の徳島市内の阿波踊りとは違う、地域に根差した温かい雰囲気が魅力で観客との距離も近い鴨島阿波踊りのシーンが撮られた。

 

 

今年の徳島市の阿波踊りは8月12日~15日、鴨島阿波踊りは毎年8月16日とのこと。

16日は日曜日なので大いに盛り上がりそうだが、暑さ対策のため例年の17時スタートが18時からと1時間短縮されたそうだ。

HOSTEL OE のご主人からいろいろと阿波踊りのお話しを伺って、生きているうちに一度は体験したいと思ったが、16日はバンテリンドームへ中日×巨人を観戦に行くので、来年また来たいと思う。

 

 

商店街にある赤い鳥居をくぐって路地に入ると、昭和のノスタルジックな香りが漂う稲荷通りがあり、暫しのタイムスリップを楽しんだ。

左側の並びの一番奥にある焼きそば屋さんが、立が始めたベトナム料理店として撮影された。

 

 

聖地巡礼とは別に行きたいと思っていたところがあり、そこは『moku moku note Bakery&Cafe』という山の中にあるお店。

2008年に徳島の美郷に移住されたオーナー夫妻が約13年かけてセルフビルドで理想のお店を造られ、国産小麦やライ麦、有機栽培の素材、全粒粉などにこだわって自家製酵母を使い薪窯で焼いていて、凸凹六人家族と音楽に文学という、心をそそるキーワードが満載だし、移住というキーワードは道草キッチンと通じる。

 

 

熱中症の危険を感じる猛暑だったので車で行くことも考えたが12kmちょっとなので大丈夫だろうと、折りたたみ自転車を車から降ろして漕ぎはじめてからしばらく、登り坂にさしかかると早々に後悔した。

思っていた以上に続く登りと猛烈な日差しがみるみるうちに体力を奪い、何度も足を止めてはコンビニで買っておいたお茶の冷凍ペットボトルで、手のひら、首筋、脇の下、足の付け根などを冷やし、繰り返し深呼吸をしてしっかりと酸素を取り込んだ。

でも、立っているだけでクラクラする。

 

 

豊根村にある本場ドイツパンの大人気店 ベッケライ ミンデン への道のりに匹敵する苦行。

この苦行を乗り越えた先に美味しいパンが待っていることを心の支えに漕ぎ進んだ。

 

 

ふらふらになりながらやっとの思いで駐車場に到着。

駐車場の前の小屋の中にあるのはパンを焼く薪だろう。

期待が高まる。

 

 

ん? CLOSED?どういうこと?

 

 

体力と一緒に思考力もなくなり、扉の前にへたり込んで30分間ほどぼんやりと絶景を見ていた。

ようやく脳に酸素がまわってきて、スマホでお店のインスタを見ると勝浦町のマルシェに出店されていることがわかり、リベンジを誓って「よっこらしょ」と立ち上がった。

帰り道は行きよりもっと苦行だったが、まだ聖地巡礼は途中である。

 

 

立がお遍路さんと出会う川島潜水橋。

映画では車が橋を渡るシーンはなかったので思っていたよりも細く、ちょうど車が1台通れるくらいの橋幅。

向こう岸から車が来ていたら橋の手前で待って交互に渡っている様子を見ていると、何かほのぼのとした気持ちになった。

立のように自転車で渡りたかったが、車と自転車のすれ違いも無理なので用もないのに渡るのは迷惑かと思いやめておいた。

 

 

ロケ地マップの表紙にもなっていて映画の肝となる長楽荘。

スクリーンでは立の良き理解者である今陽子さん演じる高橋カズの自宅として登場していた。

犬山市の明治村や神戸市の異人館のように観光地にある建物かと思ったら、線路わきの普通の住宅地の中でぽつんと異彩を放っていた。

立とカズが乾杯するシーンは和館の縁側で撮られており、手前が洋館、奥が和館となっている。

クライマックスのシーンはここで撮ったからこそ映えていたと思うので、白羽監督はよく見つけられたなぁ。

 

 

鴨島駅の駐車場に車を停めていたので、鴨島に戻ると HOSTEL OE の前にちょうどご主人が出て来られた。

ご挨拶をすると、何処に行ったのかを聞かれたので「山の上の薪窯のパン屋まで行ってきました」と言うと「えっ、美郷のパン屋?この自転車で?これ電動?」「人力です」と答えるとビックリしてみえた。

OE の1階は『青』という焼肉屋さんで、昨日はここで夕食をいただいて最高に美味しかった。

ご主人のお父さんのお店なのかな?

宿泊客のみ定食メニューを注文できるので、お得に食べることもできる。

 

 

その焼肉屋の入り口で奥さんが作られたドーナツが販売されていてどれも美味しそう。

現在カフェを建設中で秋ごろにオープン予定とのこと。

 

 

名古屋のお土産のお礼にと、ドーナッツを5つも袋に入れていただいた。

カフェがオープンしたらまた来たいし、パン屋のリベンジもあるし、ということで12月に2泊予約をお願いした。

もちろんあの部屋で。

「人生はいろんな人と出会って、また会いたいという気持ちがつながっていくものなんだ」

予告編にもある立の言葉。

映画のテーマのような聖地巡礼となった。

ソレイユ・2 『HOLD UP MORNING』 高松聖地巡礼

 

2026.7.31 ソレイユ・2

HOLD UP MORNING

 

 

小豆島ご出身の村口知巳監督の地元での凱旋上映ということで、舞台挨拶の日ではないにもかかわらず、主演のつかささんとふたりでお客さんのお見送りに来られていた。

監督から感想を聞かれた私の前のお客さんが「よくわからなかった」と返答されていたが、確かにわかりやすいメッセージはない。

そこが本作の魅力なのである。

 


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予告編を観ただけでも文学的であると感じることができる。

明確な答えを与えていないところ、3つの出合いが過去に遡る構成、場面ごとの余白が多くその余白を観る側が埋めていく構造が文学的である。

村上春樹の短編小説を映画化して、今年4Kリマスター版でリバイバル公開された『トニー滝谷』と、「大切な存在をなくした喪失感のなかで人はどう生きるのか」が共通のテーマとして流れているように感じた。

着地点は違っているがどちらの作品も喪失感を克服する物語ではなく、前向きに生きようというわかりやすいメッセージはない。

喪失感を抱えたまま、生きる意味なんてなくても、朝は否応なく訪れ、物語は続いていく、という静かな希望を感じられた。

村上春樹の新作短編小説を読んだような気分。

 

 

村口監督は新たにサインを考えられたそうで、シアターカフェでの『村口知巳監督特集』の際にいただいたサインを見るとクセのある漢字で名前を書いてあるだけだった。

監督の記念すべき初サインと、つかささんは劇場名まで入れていただき、ありがとうございます。

 

 

その劇場『ソレイユ・2』は全国ミニシアター巡り15館目(愛知除く)で、四国のミニシアターは初。

同じビルの4階には『ホール・ソレイユ』がある香川県唯一のミニシアターで、香川の映画文化を支える貴重な劇場である。

高松市の繁華街にあってアクセスも良い。

 

 

レトロで落ち着いた館内は昭和の映画館の佇まいで、長年映画好きに愛されてきた歴史を感じられる。

近々ここで公開される『FUJIKO』も昭和感のクセが強くオススメなので、お近くの方は是非。

 

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『HOLD UP MORNING』が文学的映画だったので、文学にちなんだ映画ロケ地の聖地巡礼。

 

 

映画『本を綴る』で矢柴俊博さん演じる主人公が訪れた『本屋ルヌガンガ』。

ソレイユからすぐ近くにあり『HOLD UP MORNING』のチラシも置いてある。

お店の前に着くと店主の中村さんが移動式のスロープを扉の前に置かれて、車いすのお客さんが出てくるところだった。

その様子を見ただけで素敵な本屋さんであることがすぐにわかった。

 

 

売れる本だけを並べるのではなく、店主の視点で選んだ良質の本との出会いを楽しめる空間になっていて、カフェスペースもあり、ゆっくりと過ごすことができる。

映画『ジュンについて』の主人公、島田潤一郎さんが一人で営む出版社『夏葉社』との繋がりも深く、島田さんのトークイベントや出版記念イベントも開催されるなど、一冊一冊を大切に読者へ届けたいという想いと、長く読み継がれる本を届けたいという理念を共有されている。

中村さんと島田さんの物腰が柔らかいところも似ていた。

 

 

夏葉社の本を2冊購入。

どちらも大切に読まさせていただきます。

 

 

こちらも『本を綴る』で主人公が訪れた『半空』(なかぞら)。

席について店名が小さく印刷された紙袋をカウンターに置くと「ルヌガンガへ行かれたのですね」と聞かれた。

 

 

マイルス・ディヴィスの『So What』がクールなアレンジで流れきて心地よかったのでミュージシャンを教えていただいた。

 


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ニコラス・ペイトン & ブッチャー・ブラウンの『A Supreme Blue』とのこと。

1週間前に配信リリースされたばかりだそうで、音楽へのアンテナを常日頃から立てているのだろう。

店内の雰囲気とマッチした音楽にお美味しいコーヒーと本棚だけでは足りずカウンターにも積まれた本への溢れる想い。

そして半空新聞。

行きつけのジャズ茶房靑猫を越える好みのお店はないと思っていたが、ここは匹敵するなぁ。

靑猫のマスターは讃岐うどん好きで時々香川へ行かれるので教えてあげよう。

 

 

『珈琲と本と音楽』だけではなく、ラフロイグ、ボウモア、グレンフィディックなど、スコッチのシングルモルトにジャパニーズシングルモルトの山崎に白州、シングルグレーン知多など、こりゃ靑猫を越えたかも。

 

 

第八回半空文学賞入選作品集を購入。

読むのが愉しみ。

ソレイユで映画を観て、ルヌガンガで本を選び、半空で余韻に浸る良い一日。