
わたしの頭はいつもうるさい
主演・監督・脚本・プロデュース 宮森玲実
小説家を夢見て東京でもがいている25歳の望に18歳の望が「応答せよ」と語りかける。
18歳の望は劇場の客席にも語りかけくるようなカットになっていて、身に覚えのある観客は望の言葉がグサリと刺さったであろう。
20代後半から30代前半にかけては、人生が見えてくる年齢であり、このままでいいのかと迷う年齢でもある。
以前『団地のふたり』で中年期の心の危機「ミッドライフクライシス」について書いたが、こちらは「クォーターライフクライシス」と言うらしく、人生には様々なクライシスがあるようだ。
もちろんパーソナルなクライシスもあるので、どの年代が観てもそれぞれに思うことがあるだろうし、それぞれの受け止め方ができる静かな余韻も良かった。

刈谷日劇での3回目の舞台挨拶は好評だからこそ出来る事であり、さらに延長上映が決まって4回目があるようなお知らせもあった。
その中の質疑応答で音の使い方についての質問があり、深田晃司監督のある作品からの発想とのことだった。
私も深田監督の作品は大好きで、シアターカフェの江尻さんを介して上映会を主催したこともあるし、その実験的な短編も観ていて、それを自分のものとして取り入れるセンスの高さも感じた。
うるさくない空っぽの頭で腕組みしてみてもいいアイデアが浮かぶはずはない。
常にインプットして、思考して、くだらないアイデアでもいいのでたくさんアウトプットして、宮森さんの頭はいつも映画のことでうるさいのだろう。

文庫本をイメージしたパンフレットも宮森さんのアイデアなのかな。
単館系の作品は予算の関係で撮影日数も限られていて、雨を降らせる予算もなければ天候の回復を待つ予算もない。
その奮闘ぶりがよくわかるプロダクションノートを読むと、あの名シーンは当初の脚本にはなく追撮で撮られているのに編集能力の高さも感じ、いろいろと踏まえた上でまた観たい。

同級生役の笠松七海さんはセーラー服姿のときには気付かなかったが、25歳で再会するシーンで笠松さんだったのかと関心した。
成長していないチャラ男の細井じゅんさんもキャラ立ちしていて、それとは対照的に18歳と25歳を演じ分けていたふたりの演技も素晴らしく、女優に専念された来年公開の新作『愛のごとく』も楽しみである。