necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『チャレンジャーズ』 『パスト ライブス / 再会』

 

2024.6.10 ミッドランドシネマ名古屋空港 『チャレンジャーズ』

 


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予告編にある「本当のテニスって?」と聞かれるシーンのあとに続く答えがこの作品の肝。

試合中に足の大怪我を負い選手生命を絶たれてしまった若きテニス界のスター、タシ・ダンカンと彼女に憧れるふたりの男子テニスプレーヤー、パトリックとアートとの三角関係を描いた作品なのだが、ジュニア時代からの親友であるふたりの関係も怪しい。

ジュニア時代は切磋琢磨してきたふたりだが、タシの怪我により微妙な関係になりアートはタシと結婚し四大大会もいくつか制するトッププレーヤーに、一方のパトリックは才能はありながらもランキングは200位代に甘んじてホテルに泊まるお金にも困るありさま。

チャレンジャーズというのはランキング下位でも挑戦できる大会のことで、賞金目当てで参加したパトリックと、調子を落としていて調整のために参加したアート、そのふたりが決勝で顔を合わせる。

映画は決勝戦のファーストサーブから始まり試合の合間に過去シーンを織り込みながら現在と過去がテニスのラリーのようにテンポ良く展開していく。

 


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作品の中で流れる Nelly Furtado の『Maneater』。

おっさん世代で『Maneater』と言えばホール&オーツだが、タシの性格とも合致してカッコいいナンバー。

タシの恋愛は男を食うゲームのようで、「君を愛している」と言われても「知ってるわ」と返すだけ。

テニスこそが本当に愛すべき存在であり生きがい。

全編で流れる音圧の強いハウスミュージックの恍惚感や、試合でのボール目線やコート目線の観たことのないアングルなど、斬新でエキサイティング。

この作品自体が『チャレンジャーズ』である。

白熱する試合の中で、お互いにだけわかる仕草や表情で相手を理解し、ラストシーンでドーパミンは爆発して、エクスタシーに到達する。

人によって評価が分かれる作品だと思うが、今年のマイベストテン1位候補。

 

 

残念ながらパンフレットは売り切れ。

愛知県の上映館は2館のみで、初めてミッドランドシネマ名古屋空港に行ったのだが、だだっ広い駐車場のフェンスの向こうは県営名古屋空港の滑走路で、映画館のロビーから飛行機の離発着が見られるロケーションはここだけだろうし、月イチでは行っている『Honky-Tonk』からも近いので、この映画館を知れたのも収穫。

 

 

三角関係と言えば4月にセンチュリーシネマで鑑賞した『パスト ライブス / 再会』もそう。

 


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『チャレンジャーズ』が肉食系三角関係ならこちらは草食系三角関係。

淡い恋心を持っていたナヨンとヘソン。

両親の仕事の都合で12歳のときにナヨンはアメリカに渡ってノラと名乗り、24歳のときにFacebookでヘソンがノラを見つけオンラインで再会するも関係は続かず、36歳でノラに会うためにヘソンはニューヨークへ行き、再会の7日間。

そのときノラは結婚していて、夫が肉食系テニスプレーヤーだったら絶対に会うことを許さなかっただろうが、ユダヤ系の作家アーサーは自宅にヘソン呼び3人でバーに出かける。

 

 

仕事に関し野心家のノラはグリーンカード目当てでアーサーと結婚したのでは?と匂わせ、アーサーはノラとヘソンのドラマチックな24年間の月日に自分ではどうしようもないもの(縁)を感じる。

3人それぞれの想いが交錯し、それぞれが選択した道とは。

こちらのラストシーンはじんわりと深い余韻を残し、あの時違う選択をしていたら?というのは誰しも思うことで、人としての存在についてのテーマは万人が共感できるマイベストテン上位候補。

 

 

パンフレットにあるセリーヌ・ソン脚本/監督のインタビューではラストシーンにも触れていて、また目頭がじんわりとした。

 

 

『チャレンジャーズ』は『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督作品ということで足を運んだのだが、ポスターに監督の名前の前に脚本家の名前があるのは何で?

予告編でも監督の上に名前があるし。

ジャスティン・クリスケツって誰?

プロフィールを検索してみると、配偶者セリーヌ・ソン(2016ー)とあった。

ご夫婦揃って映画の監督・脚本は初めてとのこと。

ルカ・グァダニーノ監督の次回作を見逃せないのはもちろんだが、セリーヌ・ソン脚本/監督、ジャスティン・クリスケツ脚本の次回作も要チェックである。