2024.8.25 シネマスコーレ
かんとく 伊勢真一
『大好き~奈緒ちゃんとお母さんの50年~』
奈緒ちゃんシリーズの第5作。
監督の姪っ子にあたる奈緒ちゃんが重いてんかんと知的障がいをもって生まれ、医師から「長くは生きられない」と告げられたことから家族のために映像を残そうと撮影が始まり、奈緒ちゃんは50歳の誕生日を迎えた。
なので、映画館で上映するための作品ではなく、家族のためにというところからスタートし、そのスタンスは今も変わらず、演出もカメラを意識した台詞もない。
すべてが自然体の日常の風景である。
てんかんの発作を起こすシーンもあるが、これも日常。
2017年に劇場公開された前作『やさしくなあに』はマイベストテンの1位にさせていただいていて、奈緒ちゃんとお母さんの元気な姿がスクリーンに映し出されただけでじんわりと温かいものが湧いてきた。
パンフレットの表紙に描かれているピアノはお母さんが二十歳の頃にバイト代で購入して60年が経つ代物で、ピアノによって気持ちをリセットしたり気分転換したり、お母さんはピアノも大好き。
80歳になり心臓の病気で手術し通院を続けていることから、いつ何があるかわからないと終活を始めたお母さん。
その響きはPLAYというよりもPRAY。
たまたま奈緒ちゃんは障がいをもって生まれてきて、お母さんが奈緒ちゃんを育てる中で、生きる意味や幸せの意味を奈緒ちゃんから教わったように、弱い者を育むことから社会全体が学ぶべきものは多い。
「私には障がい者の子がいて本当によかった」と、心から感謝されているお母さんの言葉の数々はまるで哲学者のようであった。
シネマスコーレを出ると前の通りで交通規制が行われて、どうやら『にっぽんど真ん中祭り』の踊りがあるらしい。
その通り沿いにある焼き鳥竹橋で間借り出店されていたくもサンドのシフォンケーキでほんわか。
お互いに大好きなのが伝わってくるインスタで拝見している娘ちゃんがお手伝いに来ていて、こちらの母娘関係にもほんわかさせられる。
苦悩と歓喜が伝わってくるエネルギッシュなパフォーマンスをシフォンケーキを頬張りながら動画に収めた。
帰り道に久屋大通公園で先ほどの衣装を目にしたので声を掛けると、大阪の一華 -Ikka- というチームだと教えてもらい「これからメインステージで踊りますのでよろしければ観ていってください」とピースサインをいただいた。
折角のご縁なので高い位置からステージ全体を見渡せる特別観覧席で鑑賞。
漫才師を目指す中で味わう挫折と手応え。
ステージに出てくると同時にザーっと降り出した雨にも打たれながら立ち上がる。
映画の中で奈緒ちゃんの弟の記一さんが屋外ステージで和太鼓を叩き、その姿を母さんが見つめるシーンがあった。
記一さんがうつ病になって「こんなに苦しくても、生きてなきゃいけないの?」と毎日言っていたときに、「生きなきゃいけないよ」とお母さん。
このとき和太鼓が励ましになったとのこと。
そんなお母さんも「奈緒ちゃんと二人で死にたいなって、何回も思ったよ」語り、「記一のためにそういうことしちゃダメねって」自分に言い聞かせることによってとどまった。
小さい頃「奈緒ちゃんをいじめちゃいけないんだよ!」と立ちはだかっている記一さんを見て胸がいっぱいになったそうだ。
自転車で来ていて傘をもっていなかったので、ずぶ濡れで思い出し泣きしながらステージを観ていた。
一華さん、優秀賞おめでとうございます!
来年も楽しみにしています!