necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は

 

2025.5.19 センチュリーシネマ

大九明子監督『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

 


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先日、ミッドランドシネマ名古屋空港で鑑賞し、張り巡らされた仕掛けと怒濤の展開に脳みそが揺れまくるという好みの作品だったので、2回目の鑑賞。

大学で小西(萩原利久)と桜田(河合優実)がHPSの講義を受けているさりげないシーンがあるのだが、このふたりにはその傾向が見受けられ、大学では他の学生が通らない裏道を歩きチャイムの音もうるさく感じるなど、人混みや音に対して敏感で、他人の視線から身を守るためのアイテムとして小西は傘を差し桜田は髪をお団子にしている。

でも、外からの刺激には敏感な小西は銭湯でのバイト仲間であるさっちゃん(伊東蒼)からの好意にはまったく気付かず、無意識の思わせぶりな言葉と無神経な有頂天ぶりで傷つけるのだが、鈍感というのは時に残酷で罪深い。

 

 

ポストカードにもある「セレンディピティ」が物語のキーワードになっていて、この言葉には偶然がもたらす幸福やそれを見つける能力などの意味があるのだが、ラストシーンに向かう場面でのセレンディピティはむしろシンクロニシティで、幸福に向かう要素は感じられず、一瞬興ざめするくらいやり過ぎだろうと思ったところ、その後の展開によって、さまざまなことが繋がり、さまざまな感情が洪水のように押し寄せる。

「泣くことがこんなに痛いんやて初めて知った」悲しみのどん底でも、お腹は空くし、眠たくなるし、犬マネでじゃれ合って可笑しければ笑えるし、あんな場所で愛の告白もできる。

それが人間だし、だから人間はまた前を向いて歩いて行ける。

 

 

萩原さん、河合さん、伊東さん、それぞれにある魂を込めた長セリフのシーンも作品の見どころで、演技力重視のキャスティングだった思うが、この3人が決まった時点で大九監督は作品の成功を確信されたに違いない。

そのくらい3人ともがそれぞれに際立っていて素晴らしかった。

そして、伊東さんの怪演に泣かされたそのシーンであるさっちゃんの告白を聞く小西の態度とそのあとの行動があまりにも無神経でクソで、誰しもやっていそうなのが痛い。

 

 

原作はジャルジャル福徳秀介さんの同名小説で、映画館を出たあとに文庫本を購入。

刈谷日劇にて、6月6日より2週間上映されるので、小説を読んでからまた鑑賞したいし、6月20日と26日に BABELL LABEL RETROSPECTIVE 2025 の中で、萩原さんが出演されている原廣利監督『朽ちないサクラ』の限定上映もあるので、こちらも楽しみ。

 

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