necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『箱男』『死後写真』

 

2024.9.15 伏見ミリオン座公開記念『箱男』舞台挨拶

登壇者 石井岳龍監督 永瀬正敏さん

 

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9月2日に予定されていた舞台挨拶が台風10号の影響により中止となり、そのまま開催されない場合も多いところ、2週間後にお二人揃って中止になった各地をまわられたことからもこの作品に懸ける並々ならぬ思い入れを伺えた。

中止になった前回は月曜日だったが今回は日曜日ということもあり、チケットは早々に完売となって、前回予約されて今回来れなかった方々にお気遣いされていた。

 

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映画の冒頭に写真の映像がいくつか差し込まれているのは安部公房が撮った『箱男』の書籍のなかにある写真であり、『箱男』の着想は写真家としての視点からだろう。

写真機をカメラと呼ぶようになった語源、カメラ・オブスキュラは、ラテン語で暗い(オブスキュラ)部屋(カメラ)の意味で、真っ暗な部屋の小さな穴に光が差し込むと反対の壁に部屋の外の景色がさかさまになって映しだされる。

暗い部屋とはまさに箱の中である。

カメラのファインダーを覗けば、他人からの視線は消えて、一方的に覗く立場になれる。

『光』の感想で想像力について触れたが、外部から遮断された暗い部屋、制限された視界、箱の中では人の感覚と想像力は研ぎ澄まされていく。

 

 

伏見ミリオン座のスタッフによる箱の再現度の高さに感心しきりのおふたり。

この映画はみなさんに箱男になっていただいて一緒に作っていくという試みもあるとのこと。

映画館も暗い部屋でスクリーンが覗き穴となってまさに箱である。

映画館によって箱のサイズや空気感が違い、作品の見え方も変わってくる。

愛知では『永瀬正敏作品特集』も企画された刈谷日劇で9月20日より上映される。

そちらの箱でも鑑賞したい。

 

 

2024.9.15 シアターカフェ『死後写真』舞台挨拶

登壇者 溝井辰明監督 森山みつきさん

箱男』からのはしご鑑賞で、こちらの舞台挨拶も完売満員御礼。

上映時間45分を上回る1時間越えの舞台挨拶にこの作品に懸ける並々ならぬ思い入れを伺えた。

 


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『死後写真』というタイトルからホラーっぽいものを想像していたが、まったく違っていた。

傍に居るときは居て当たり前で、いなくなったときの喪失感によってどれだけ大切な存在であったかを知ることが出来る。

そして、森山さん演じる依頼人の女性は自分の死期も悟っていたのかも知れない。

 

 

死後写真とは死者を偲んで亡くなって間もない人を撮影したもので、ヨーロッパなどであった風習だそうだ。

映画を撮る切っ掛けになった写真では亡くなった男性の頭を支えている女性はカメラ目線ではなく男性を見つめていて、いろいろと想像は膨らむ。

溝井監督は映画を専門的に学んでいないそうで、経験と知識を身に付けたらどんな映画を撮ろうかではなく、まず撮りたいものがあったからそれをどう表現していくか試行錯誤していく。

箱男』の石井監督と同じスタンスである。

だから溝井監督はオーディション開始から上映まで2年半の歳月をかけて細部にまで拘り抜かれたし、石井監督はクランクイン直前の撮影中止から27年待っても諦めなかった。

 

 

森山さんを前面にカラフルな国内版とイメージを優先したモノクロの海外版。

それぞれの観る側を意識してのデザインだろう。

サントラはエリック・サティの選曲も良かったし、サティの2曲以外は溝井監督の手によるもので、シーンが思い浮かぶ佳曲が並び、音楽を専門で学んでおられたのか?

 

 

ギャラリー展示では出演者や撮影場所の写真に映画で使われた小道具なども展示されていて、赤い紙の召集令状はデタラメの内容だそうだが、知らない人が見たら本物に忠実に作られたと思える完成度。

その中のある劇中に出なかった展示物を見ることによって映画のラストと現在の空間が繋がるという画期的な試みもされている。

これは劇場でなければ体験できないので、機会があれば足を運んで鑑賞していただきたい。

 

https://x.com/90a44f5e321349f/status/1720113502839337459

 

刈谷日劇で上映中の森山みつきさん主演『野球どアホウ未亡人』。

私が最終上映で見逃せないと鑑賞した日から10ヵ月以上経ってもまだ上映されている。

 

https://kariyanichigeki.com/News/144

 

でも、いよいよ9月26日で上映終了ということで、9月22日に【サヨナラ刈谷日劇 ミボウジンカーニバル】が開催される。

残念ながらその日は都合が合わず伺えないが、終了までに足を運びたい。

そのときはまた『箱男』とはしご鑑賞したい。