2021.5.8 シアターカフェ 芳賀俊監督・鈴木祥監督『おろかもの』
若手映画監督の登龍門である『田辺・弁慶映画祭』で、史上初の5冠受賞を達成した作品。
名古屋では昨年シネマスコーレで上映されたが、シアターカフェのオーナー江尻さんが特に若い女性に観ていただきたいということで名古屋での2度目の上映となった。
でも、この日の観客は若くもなく女性でもないおっさんのみで、なかなか思い通りにはいかないが、おっさんでも十分に楽しめた。
高校生の洋子は結婚を目前に控えた兄の健治が、美沙という女性と浮気をしている現場を目撃する。両親を早くに亡くし、2人で支え合って生きてきた兄の愚かな行為とそれを隠して何食わぬ顔で生活している様子に洋子は苛立ちを募らせる。一方洋子は健治の婚約相手・榊果歩に対して、兄と2人だけの関係の中に突然入ってきた存在として言い様のない違和感と不満を感じていた。衝動と好奇心に突き動かされて美沙と対峙した洋子は、美沙の独特の物腰の柔らかさと強かさ、そして彼女の中にある心の脆さを目の当たりにして、自分でも予期せぬ事を口走ってしまう。
「結婚式、止めてみます?」
2人の女性達の奇妙な共犯関係が始まる。
(公式サイトより)
昨日の敵は今日の友、可愛さ余って憎さ百倍。
人間関係における感情のコントロールも思い通りにいかない。
婚約者がいるのに浮気をする健治が一番のおろかものであることは間違いないが、思わず「結婚式、止めてみます?」と浮気相手に言ってしまう洋子もおろかものだし、それを真に受ける美沙もおろかものである。
普通ならドロドロしそうな話だが、おろかもの達は時には憎めない顔も見せ、人間の多面性がしっかりと描かれているため爽やかささえ感じる。
そのおろかもの達を取り囲む洋子の友人の小梅や健治の同僚の倉木もキャラ立ちしていて、中でも婚約者の果歩を演じる猫目はちさんは最初は地味なキャラだと思ったがさにあらず。
そのあたりの描き方も秀逸。
『卒業』を思わせる教会での結婚式のシーンでは、それぞれの表情がセリフでは表現できない心の内を物語っていた。
中1の時に初めて自分の小遣いで観た映画は『ロッキー』と『卒業』の二本立てだった。
当時は入れ替え制ではなく適当な時間に入ったらロッキーがエイドリアンを自分の部屋に呼ぶシーンで、『卒業』はちょっとエロい♡という勝手な思い込みがあって、スタローンのたれ目と肉体はエロ男優っぽく、しばらく『卒業』だと思って観ていた。
それ以来『卒業』は何度も観ているが、最初はパッピーエンドだと思っていたラストシーンはベンの表情からそうではないかも?と思わせる。
一時の感情からおろかなことをしてしまったとも読み取れる。
こちらは不倫によってジャニーズ事務所を退所した本物の愚か者。
どうやら人望もなかったみたいだ。
同じ1964年7月19日生まれとしてはちょっと切ない。