necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

アンダーカレント

 

2023.12.18 刈谷日劇 

今泉力哉監督 『アンダーカレント』

 

 

ジャズ好きが『アンダーカレント』と聞けば、まずビル・エヴァンス(ピアノ)とジム・ホール(ギター)によるデュオアルバムを思い浮かべるだろう。

インタープレーの極致とも言われる演奏の素晴らしさは言うまでもないが、一度見たら忘れられないジャケットも印象的な名盤である。

映画の中でこのジャケットを彷彿させるイメージカットが何度か繰り返されていて、原作はコミックらしいが、原作者の豊田徹也氏がこのアルバムからインスパイアされたと思われ、『窓辺にて』や『街の上で』など、オリジナル作品の印象が強い今泉力哉監督が、20年近く前のコミックを映画化されたのも興味深く、原作本も読んてみたい。

 


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『アンダーカレント』は底流を意味しており、表面的ではない心の底流にある部分が作品のテーマになっていて、予告で「人をわかるってどういうことですか?」と失踪した夫を捜す探偵役のリリーフランキーさんの台詞があるが、自分のことすらろくすっぽわからないのに、ましてや人のことなどわかるはずもなく、わかっているつもりになるだけである。

 


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このレコードが録音された1962年はベーシストのスコット・ラファロが自動車事故で亡くなった翌年で、大切な盟友の突然の死によって失意の底に沈んでいたエヴァンスが復活するきっかけになった作品と言える。

インタープレーとは会話のように相手の演奏に呼応する相互作用のスタイルで、相手の音を理解しようとする姿勢が必要となり、自分だけ目立てば良いという演奏では成立しない。

映画もお互いに喪失感の中でもがきながら新たな一歩を踏み出そうとし、様々な解釈ができる余韻の深いラストシーンも素晴らしかった。

人のことをわかることができなくても、わかろうとすることが大切である。