necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『BLUE GIANT』大音響重低音上映 大谷ノブ彦映画会  『せかいのおきく』

 

2023.5.8  伏見ミリオン座

BLUE GIANT』大音響重低音上映 大谷ノブ彦映画会

 

 

2月17日の公開から3ヵ月のロングラン上映となっている『BLUE GIANT』。

メンバーになっているFacebookの『ジャズ部』でも絶賛の嵐で、耳の肥えたジャズ通からも認められているのだが、主人公達が挫折を味わいながらも成長していくという王道のストーリーが透けて見えたので、「まぁいいか」とスルーしていた。

 

 

でも、今回のミリオン座では大音響重低音上映に加えて上映中の拍手や声援もOK、しかもダイノジ大谷ノブ彦さんのトークも楽しめるということで興味を惹かれ足を運んだ。

上原ひろみさんをはじめとした一流のジャズミュージシャンの演奏を大迫力の音響で聴けるだけでも2000円以上の価値は十分にある。

 

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ライブシーンが終わると大きな拍手が湧き起こり、劇場はライブハウスと化した。

CGの違和感はちょっと気になったが、これは絶対に映画館で、出来れば音響の良いスクリーンで観るべき作品。

ストーリーは予想の範囲内で驚きはなかったものの、現在のジャズが置かれている状況がリアルに描かれ、ジャズあるあるも詰まっていて十分に楽しめた。

ただ、主人公の宮本大が「世界一のジャズプレーヤー」に拘っていて、スポ魂要素を取り入れているのがウケている要因のひとつだと思うが、音楽は勝ち負けではないからなぁ。

 

 

上映後の大谷さんのトークでは、原作との違いやライブシーンでの聴きどころなどの独自の解釈がお聞きでき、映画の奥行きが深まった。

トークがノってくると雪祈 (ピアニスト) のように椅子から立ち上がって熱弁を振るう場面も。

 

 

サイン会では音楽通の大谷さんに聴いていただきたく、仙台から単身で上京した大のように我が瀬戸市から単身上京して活動しているシンガーソングライターの加藤伎乃さんをご紹介させていただいた。

「ありきたりな歌詞、曲じゃ私がやる意味ないよ、ほんと」

伎乃さんの5月6日のTwitterでのつぶやきだが、こちらは唯一を追求されている。

 

 

伏見ミリオン座に行く前にロジウラのマタハリの月曜レコード倶楽部へ。

映画では大がテナーサックスを始めた経緯や影響を受けたミュージシャンなどは描かれていなかったが、私がジャズを聴くようになった入口は高1の時に衝撃を受けたこのアルバムからということで、リターン・トゥ・フォーエヴァーの『第7銀河の讃歌』を掛けていただいた。

 

 

上原ひろみさんと言えばチック・コリアスタンリー・クラークは外すことはできない存在だし。

 

 

これから『BLUE GIANT』を観に行くことをオーナーのりりこさんに話すと『BLUE GIANT』は最高の音響設備で鑑賞するためイオンシネマ名古屋茶屋まで行ったとのこと。

「さっき私も茶屋で一本観てきたところです」と返すと、いつもだったら「何を観られたの?」と聞かれるはずだが、この時は聞かれなかったのでお伝えしなかったが、茶屋で観てきたのは『せかいのおきく』。

 

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糞尿を買い取って肥料として農家に売ることで生計を立てる汚穢屋の忠次とお役御免になった父と貧乏長屋に住む武家の娘おきくとの身分を越えたささやかで淡い恋。

安政から万延にかけての江戸末期、庶民の生活は決して楽ではないが、助け合い冗談を言い合って逞しく生きている姿に心揺さぶられ力を頂いた。

説明はなかったものの時代背景から、おきくが声を失い父を殺害されたのは安政の大獄であろうし、おきくが忠次の家を訪ねた雪の日は桜田門外の変が起きた当日なのかも知れない。

そんな日本が世界への門を開く激動の時代、佐藤浩市さん演じるおきくの父源兵衛が寛一郎さん演じる忠次に「なぁ、せかいって言葉知ってるか?」と厠で用を足しながら話す。

親子共演の名場面である。

声を失った黒木華さん演じるおきくが手話のない時代で身振り手振りて意志を伝え、「ちゅうじ」と書いて身悶えるシーンでは恋心が伝わってくる素晴らしい表現力。

池松壮亮さん演じる矢亮が忠次と肥桶を担いで走るシーンは笑うところで、サイクロン号張りのコーナーリングは職人技。

情感を湛えるモノクロの映像は穢れのない美しさで、美術セットは江戸にタイムスリップしたかのよう。

この糞尿が溢れ出て屁をたれる作品を撮ると決めたのがスゴイし、今年のマイベストテン1位候補の好みの作品。

BLUE GIANT』が大音響重低音上映ならば、こちらは臭い付き上映で是非。

 

 

マタハリで決まって注文するタイカレー (ライスをオートミールに変更) は、レッド、グリーン、イエローの週替わりとなっていて、どれも均等に好きなので当たりはずれはないのだが、今日だけはイエローでありませんようにと願ったが本日のタイカレーはイエローであった。