2021.9.23 ロジウラのマタハリ
早川純 バンドネオンソロツアー
マスクまでコーディネートされた細身のスタイルに細身のフレームが似合うおしゃれ番長はライブの前に床屋で顔剃りをされているのか。
顔剃りはともかく、ライブ前のPCR検査は欠かさないそうだ。
映画『イージー・ライダー』の挿入曲でおなじみの『Born to be wild』で、蛇腹がうねりながら疾走する。
まさかの選曲だが、ドイツで発明されてパイプオルガンの代用楽器としても使われていたバンドネオンが、アルゼンチンタンゴに欠かせない楽器になったのも発明者のバンドさんからすればまさかであろう。
音楽は自由で何でもありなので、ワイルドで行こう。
オリジナル曲の『鉄馬』はバイクのことで、サブタイトルの 『SR500 』は純さんの愛車の型式。
「ズドドドドド」と、単気筒独特の歯切れの良いエンジン音がバンドネオンで表現され、楽器がマニアックなら演奏もマニアック。
会場もマニアックな感じがするところばかりで、どうやって探されているのか。
仕事も趣味もやりたい事を見つけて、しかも趣味が仕事に活かされて、さらにどちらもエンジョイしているという、最高のショット。
マニアックを強調すると取っ付きにくいライブと思われるかもしれないが、もちろんバイクに関係のないアルゼンチンタンゴの珠玉名曲がメインの構成になっていて、楽器の構造や弾き方、歴史など、巧みなトークに初めてバンドネオンの演奏を聴かれる方でも十分に楽しめる内容になっている。
そのためにもバイクは絶好のアイテム。
マタハリのある名古屋駅周辺は駐車場代がそこそこするが、お店の前に停めておけば無料だし、移動中に風を感じながら様々なイマジネーションが広がっていくのだろう。
10月の中国・四国地方をまわるツアー。
絶滅危惧種と言われるバンドネオンの魅力を全国津々浦々に広めるライフワークの旅は続く。
会場近くにお住まいの方がおられたら、ふらりと寄ってみては。
後日、この日の会場だったロジウラのマタハリで20周年&あと2日で営業終了という日にランチをした。
ビルの老朽化のため立ち退かれるのだが、名古屋駅から徒歩圏内でミニシアターの殿堂シネマスコーレの前という最高の立地なだけに勿体ない。
閉店を惜しむお客さんで満席だったため、外で少し待ってから入店した。
いつもならりりこさんと、これから何を観に行くとか何を観てきたという映画の話をするのだが、忙しくてそれどころではない様子だったので、ここで書きます。
伏見ミリオン座にて春元雄二郎監督『由宇子の天秤』を鑑賞。
マタハリでは毎回、今日のごはんと今週のタイカレーの2択で天秤に掛けているが、この日は両方とも完売のためパッタイを注文するしかなかった。
映画はそんな軽い分銅ではなく、思っていたよりもずしりと重みがあった。
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子は、自殺した生徒、生徒との関係を疑われた先生の遺族、学校側の言い分、それぞれが違うことに何が真実で何が嘘かを突き止める中で、自分の家族の問題を知ることによって心の中の天秤がぶれていく。
報道批判を含めドキュメンタリーを制作しようとする由宇子とその部分のカットを指示する上司。
企画・撮影で自分を貫いても編集によって自分の意図と違った作品になることへの葛藤。
守られるべき自殺者家族や親族が被害者となってしまう社会の矛盾。
立場によってそれぞれの天秤があって、それぞれの関係性によっても天秤があり、ぐさりと突き刺さる必見の一本。
自分の天秤で量りながら観ていただきたい。
今まで天秤に乗っていなかったパッタイはライスとの相性が良く美味しかったです。
まずはごゆっくりされて、お店の再開は気長に待ってます。
その際にはパッタイもしっかりと天秤に乗ること間違いなし。
コロナ禍において、音楽関係者が音楽は不要不急ではなく音楽には力があると声高に主張されているのには一般論としては違和感がある。
純さんがライブの中で「みなさんの不要不急が僕たちの日常です」と言われたのが印象に残り、この人のバランス感覚と音楽は信用できると思った。
左手の低音と右手の高音を蛇腹の押し引きにより絶妙なバランスで奏でるバンドネオンはちょっと天秤っぽいかもと思う。
マタハリ再開の際には純さんのライブもお願いします。