necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『遠いところ』『リバー、流れないでよ』『ドロステのはてで僕ら』

 

2023.7.27 伏見ミリオン座 工藤将亮監督 『遠いところ』

 

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伏見ミリオン座でこの予告編を観て「絶対観たい」と思いながら、かなりキツそうだったことから躊躇もあって公開3週目にようやく足を運んだのだが、予想していた以上にキツかった。

でもエンドロールでぐったりとしながら「凄いものを観た」という思いは、このキツさがあったからこそ。

 

 

沖縄は、一人当たりの県民所得が全国で最下位。子ども (17歳以下) の相対的貧困率は28.9%であり、非正規労働者の割合やひとり親世帯 (母子・父子世帯) の比率でも全国1位 (2022年5月公表「沖縄子ども調査」) 。さらに、若年層 (19歳以下) の出産率でも全国1位となっているように、窮状は若年層に及んでいる。

 ー映画、ではなく現実。

パンフレットのイントロダクションより。

「現実」と言い切るだけあって、綿密な取材とそれに基づく準備はドキュメンタリーとも思える手触りで、観光地としての光の部分や基地問題だけではない沖縄の深い闇の部分を鋭く抉り出している。

客観的に見れば不合理とも思える行動の中に沖縄のコミュニティの特殊性に因る部分を感じ、貧困による心の支配は精神を蝕み、子ども時代に大切にされた経験がない心理は自分を愛することを忘れさせる。

先日鑑賞した『ぼくたちの哲学教室』では暴力の連鎖を断ち切るには哲学が有効であると学んだが、貧困の連鎖を断ち切るには自分の力だけでは如何ともし難く助けの手が必要である。

そのためにもまずは多くの方が知るべき問題で、それは沖縄以外でも当てはまる。

 

 

既に伏見ミリオン座での上映は終了しているが、8月18日より刈谷日劇での上映が始まり、しかも19日の上映終了後に主人公アオイ役の花瀬琴音さんの舞台挨拶があるということでご紹介させていただいた。

「凄いものを観た」と言ったのはストーリーもそうだが、それだけでなく出演者の演技も全員凄かった。

アオイを取り巻く大人たちはクズばかりで、まじで嫌悪感を抱かせる演技があってそこの作品だし、みんなウチナンチューにしか見えんかった。

全員いい人ばかりだった昨年のマイベストテン1位の岸井ゆきのさん主演『ケイコ目を澄ませて』とは真逆の環境で、ジムの会長のような方がそばに居てくれたらアオイの人生も大きく変わっていただろう。

衝撃的だった花瀬さんの演技は岸井さんと同様に数々の主演女優賞を獲ってもおかしくない。

残念ながら都合が合わず舞台挨拶には伺えないが、ひとりでも多くの方に足をお運びいただきたい。

 

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8月18日~のスケジュールを見ると、なんと、『リバー、流れないでよ』と『ドロステのはてで僕ら』を続けて鑑賞できる、ヨーロッパ企画の粋な企画もあって、これはうれしい。

2本併せても『ミッション:インポッシブル / デッドレコニング PART ONE』より上映時間は短く、サックっと観られるので是非。

ミッション:インポッシブルは PART TWO を観る前に ONE の内容を忘れている自信はあるので、こちらも続けて上映してもらえる劇場はないかなぁ?

 

 

『遠いところ』と『リバー、流れないでよ』にご出演されている早織さん。

どちらも重要な役どころだが、同じ方が演じていると気付く人はどれだけいるだろうか。

こちらも素晴らしい俳優さんです。