necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『正欲』 『桐島、部活やめるってよ』

 

2023.12.3 伏見ミリオン座 

岸善幸 監督 『正欲』

 


www.youtube.com

 

シアターカフェにて毎年参加している『映画マイベストテン』について考える時期になり、先月鑑賞した『月』が圧倒的に良かったので、今年の1位『月』で決まりだと思っていたところ、それに双璧となる好みの素晴らしい作品だった。

公開中の『シチリア・サマー』もそうだが、このところLGBTQをテーマにした作品が多くなっているように思え、メインテーマになっていなくても、前回書いた『シェアの法則』や、欠かさず観ている鶴岡慧子監督の『バカ塗りの娘』など、いろいろな作品で当たり前のように扱っていて、LGBTQに対する認知度が高まっているのは間違いない。

でも『正欲』で描いているのは、LGBTQにも当てはまらない性的嗜好を持ち、世間からまったく認知されず、誰からも理解されないだろうと、生きることに辛ささえ感じている人々。

劇中でも稲垣吾郎さん演じる検事は、あり得ないとバッサリ切り捨てる。

原作は『桐島、部活やめるってよ』などでお馴染みの朝井リョウ氏。

 

 

桐島、部活やめるってよ』は11月に刈谷日劇でのリバイバル上映を観てきたばかりで、以前には感じなかった気付きもあり、私の映画的嗜好にドンピシャで凄い作品だと改めて感じた。

 


www.youtube.com

 

ラストシーン近くで東出昌大さん演じるスクールカースト上層部のモテ男が神木隆之介さん演じるカースト下層部のオタ男の予想外の受け答えに呆然とするのだが、確かにそうだよなと思った。

『正欲』でのガッキー対決もこれと重なる部分があり、イナガッキーはアラガッキーの「普通のことです」と前置きした伝えることのできない伝言に呆然とする。

何でもできると思っている奴は実は空っぽで、普通だと思っている奴は実は普通でなかったりすることもある。

人には語ることのできない価値観を共有できる仲間のような存在は大切で、一つ前の投稿で「一冊の本や一本の映画が溺れかけている人を救うこともある」と書いたが、この2作品はまさにその力がある大切な映画である。