necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

伊藤志宏×藤本一馬 2nd album 『風の旅立ち』リリースツアー  『郊外の鳥たち』

 

2023.5.9 ジャズ茶房靑猫

伊藤志宏×藤本一馬 2nd album 『風の旅立ち』リリースツアー

藤本一馬 (gt)    伊藤志宏 (pf)

 

 

靑猫に着くとお客さんが3人しかいない。

え、今日お客さん少ないの?と思っていると、「ごめん、ライブの開始時間を30分早く間違えていた」と、マスター。

どうやら開場時間前に到着したらしい。

すると、靑猫の常連の安藤さんが来られて「安藤さんも一馬さんと志宏さん聴くの?」と尋ねると「いや、マスターに誘われたから」とのことだった。

早めに来ている面々はみんなマスターマターだな。

安藤さんとは靑猫で開催されている村上春樹作品を読んで語り合う『ハルキ会』の仲間であり、新作『街とその不確かな壁』の話になった。

 

 

若い頃に『街と、その不確かな壁』を発表していて、その出来上がりに納得がいかず書籍化されなかったが、これを基に代表作『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を書き上げていて、それでもまだ心残りがあったらしく、今なら書けると40年の時を経て、新作にして村上パラレルワールドの原点とも言える作品。

 

 

一馬さんと志宏さんの新作『風の旅立ち』は40年とまではいかないものの、9年の時を経て「天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」の一首を完成させられた。

時代や流行りに流されず、表現したいことは一貫している。

この夜の音村上春樹さんの言葉をお借りするならば、観客は二人の中にある空白に耳を澄ました。浜辺の細かな砂が月の光に当たって砕けていくときのようにとても美しく繊細な音であった。

といったところか。

歌ではなく、旋律が五感に語り掛けてきたのは、いにしえの静謐な風に触れ、光と陰が交錯し、とろけるほどに甘美で、紫の花のかぐわしい香り。

この夜初めて聴かれた安藤さんもCDを購入されていた。

 

 

先日、刈谷日劇で鑑賞した『郊外の鳥たち』。

長編デビュー作のチウ・ション監督が、村上春樹さんの小説からインスピレーションを受けたということで、気になっていた作品。

地盤沈下により廃墟となった街を調査する現在と、廃校となった小学校で見つけた日記にあった沈下する前の子供たちの日常が描かれる過去とが、地つづきで同時進行するパラレルワールドが展開し、何かのメタファーであろう謎は解読困難。

 

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中国での地盤沈下は深刻な問題になっているが、確かにそこに存在していた街があって、そこで子供たちは遊んでいた。

双眼鏡で覗いた先に小学校のときに友達と裏山で遊んでいた自分の姿が浮かびノスタルジーに浸った。

現在パートの主人公がうたたねしているとき過去に戻り、引っ越しする友達の家に向かう途中にひとりずつ消えていき結局辿り着けないなど、消化しきれない部分が多かったので、ハルキ会のようにみんなで語り合いたい作品である。