2023.10.8 JAZZ茶房 靑猫
マレー飛鳥 & 林正樹 DUO ~ Fru Fru tour 2023 ~
マレー飛鳥 (vln,voi) 林正樹 (pf)
「ちょっと遅れるかもしれないけれど...」と、くちずさみながら靑猫に向かうと、開演時間には遅れなかったものの満席で座れない?
そう思っていたら、普段は椅子を置かないCDラック側に椅子を出していただいて何とか着席できた。
「昼と夜の2部制にしたい予約状況だけど、夜は読書会があるから」というマスターのお話をお聞きしていたので、かなり混み合うだろうとは思っていたが、補助椅子を出さなければ30人くらいで満席ところ、60人近く入っていて、W満席の大盛況。
靑猫の静寂を決壊させた音の洪水は、MCを含めて完全生音という垂涎のライブ。
圧倒的な音の存在感とディテールの聴き応えは生音に優るものはなく、個の技量の高さと絶妙なアンサンブルの妖美さに何度も息を呑んだ。
ふたつの音とは思えないほど、力強くて分厚く、そして緊密で繊細。
マレーさんの深みのあるボイスにも陶酔して、これ以上求めるものは何もない。
2021年にリリースされたが、コロナ禍の影響により2年越しでようやく実現できた『Fru Fru』リリースツアー。
ジャケットの抽象画は96歳にして現役画家のマレーさんのお母さんの作品の一部とのこと。
バイタリティー溢れるお母さんのお話は、そのままマレーさんにも重なり、たぶんマレーさんも100歳までは現役で弾かれるのだろう。
写真OKの曲でのワンショット。
アンコールが終わってもW満席からの拍手は鳴り止まず、Wアンコールでは完全即興。
「何も決めていません」と一言、徐にマレーさんが弾き始めると、林さんはしっとりと絡んでいき、やがて荒々しく展開していく。
言葉で説明しなくても意識のレベルで同じ景色を共有している即興演奏は、刻一刻と変わっていく自然の美しさを感じているように思えた。
「シャーベット (当時ブランキージェットシティの浅井健一のソロプロジェクト) のライブ以来、四半世紀以上ぶりにライブでお聴きしました」とマレーさんに言葉をお掛けすると、「シャーベット?」と首をかしげておられたので、「浅井健一の同級生です」と言うと「確かに四半世紀以上だわ」とずっこけられた。
マレー (当時金子飛鳥) さんの音源を初めてお聴きしたのはそれよりも数年前、1989年にリリースされた『夏のぬけがら』(当時ブルーハーツの真島昌利さんのソロアルバム) で、シャーベットの『セキララ』と共に、いまだ色あせない私的超名盤であり、年を重ねるごとにノスタルジックな色彩は濃くなってきている。
「思い出は雪だから透き通った水へ帰ってゆくだけ...」と、くちずさみながら帰路についた。