2023.10.7 Mona PETRO
山田磨依 ピアノリサイタル
CDの制作とコンサートの企画及びピアノ調律をされた三ヶ田美智子さんとのツーショット。
前回のブログを家族でご高覧してくださったそうで、感謝感激。
コンサートでも演奏されたフランスの作曲家アンリ・ソーゲ氏はバレエ音楽やオペラなど多作家過ぎて、自分の曲を聴いて「誰の曲?」と言われたそうだが、私は単に記憶力が悪くて「どんなブログ書いたっけ?」と、読み返したところ、あまりに駄文過ぎて恥ずかしい。
会場のモナペトロはクラシック以外にも様々なジャンルのコンサートも開催しており、それに合わせたカジュアルな選曲をされたそうで「ドリンクとご一緒に楽しんでくだい」と磨依さん。
そのプログラムを拝見すると、ライフワークにされているフランスの作曲家ジャン=ミシェル・ダマーズ以外の作品が半分くらいある。
今年の4月に全曲ダマーズの作品によるピアノソロのセカンドアルバム『Damase Piano Works』をリリースされていて、コンサートはそのアルバムを中心としたプログラムになるだろうと思っていたので意外だったが、確かにアルバムリリースコンサートとは謳っておらず、常に先を見据えておられるのだろう。
オープニングのフランスの作曲家ダリウス・ミョーは来年が没後50年ということで、また新たな企画がありそうな感じである。
ダマーズもそうだが、ミョーもカチカチのクラシックというより、ジャズやタンゴなどとのクロスオーバー的な手法を用いているようで、年代的にはジョージ・ガーシュウィンと重なる部分もあり、当時としてはかなり革新的で、商業的に成功したのはガーシュウィンだが、音楽的な優劣とは関係ない。
もちろん、敬愛されるダマーズの作品の演奏の素晴らしさは言わずもがなで、中でも楽譜を手に入れるのに一番苦労された『自転車』が印象的だった。
自転車乗りの端くれとしては、フランスで自転車と言えばツールドフランスで、ツールドフランスと言えば山岳ステージだが、ヒルクライムはなくダウンヒルを風を切って疾走する情景が目に浮かび、スリリングな名曲。
ジャズのライブのように、食器の音や咀嚼音をさせるわけにはいかないので、手で静かに食べられるチーズを注文して、テーブルの上もちょっとフランスっぽいイメージ。
セカンドアルバムに収録されている『おとぎ話 ピアノのための16の小作品 作品38』から『眠れる森の美女』など、4つの小作品を演奏されたが、ドイツのグリム童話ではなく、フランスのペロー童話のからのイメージだそうで、ほとんどの曲が1分も満たない小作品ながら名曲が揃っていて、CDの評判も上々とのこと。
『赤ずきん』ではバッドエンドが表現されていて、弾き終わったあと「赤ずきんちゃんは食べられました」と、磨依さん。
最高峰のすし職人の目利きの如く、一流のピアニストは耳が利きいていて曲は素材から素晴らしく、すし職人の素材の良さを引き立てる握りの如く、ピアニストは素材の魅力を最大限に引き出す。
続いて、しっかりと聴き込んでいるファーストアルバムからの『ソナチネ』を噛みしめるように聴いて感動もひとしお。
プログラムに日本初演とあったオーストラリア在住の作曲家アリステア・メロスさん。
『Damase Piano Works』の配信を聴かれたメロスさんからアルバムを聴いて楽しんだ旨のメールがあったそうで、彼女の曲を検索して聴いたところ『前奏曲第一巻』に心を打たれて、日本初演をしたい思いを伝えて東京に次いで名古屋でも演奏することになったとのこと。
有名無名関係なく、自分の物差しで選曲されるスタイルは、聴き手としてもワクワク感があり、メロスさんの曲も先鋭的で魅力に溢れていた。
プログラムに彼女のサイトのURLが記載されていていたので、是非チェックしていただければと思う。
入手困難な楽譜が詰まったお宝タブレットは、弾きながらでもウインクでページめくりできるピアニスト御用達。
ダマーズとしては、まさか自分の楽譜をこれほどまでに求めてくれて、CDにしてくれて、多くの人に紹介してくれて、こんな素晴らしいコンサートで弾いてくれる日本人ピアニストがいることは信じられないだろうし、幸せな気分だろう。
きっと雲の上でウインクしている。