2021.2.6 刈谷日劇 筒井武文監督 『ホテルニュームーン』
『永瀬正敏特集』9作品中4作品目。
大学生のモナは、教師をしている母ヌシンと二人暮らし。ヌシンはモナに、父親は彼女が生まれる前、事故に遭い命を落としたと伝えていた。一人娘の交友関係に厳しく目を光らせる母に、モナは少々辟易気味。同じ大学に通う恋人サハンドの存在もいまだ打ち明けられずにいた。モナはサハンドと共にカナダに留学する計画を立てていた。モナは、地下室に隠されていた箱の中に、見知らぬ日本人男性と母、そしてまだ幼児期の自分が写った写真を見つける。ある電話を受け、ホテルで田中と会ったヌシンは、封筒に入った金を渡し、「お金は返すからモナには絶対に会わないでほしい」と頼み込む。それを聞いた田中は「お金が目的じゃない」と答えるしかない。ヌシンの後をつけその様子を見ていたモナは、田中が写真に写っていた日本人だと気づき、母との関係に強い疑念を抱く。何も語らない母をあやしんだモナは、自分の出生にまつわる秘密を感じ取り、自力で調べようと決意する。一方、恋人のサハンドは、何かを思い詰めている様子のモナに不信感を抱き始める。ヌシンの抱えている秘密とは何なのか。モナの父親は誰なのか。田中は何を伝えにイランへやってきたのか。母と娘が抱えた秘密と噓は、やがて悲しい真実へとたどり着く――。
『ホテルニュームーン』オフィシャルサイトより
日本とイランの合作映画だが、テイストはほぼイランで日本はほんの香りづけ。
コロナ禍で出かけることもはばかられるが、映画や本は心を旅に連れて行ってくれる。
テヘランの街並み、人々の営み、時代背景。
1990年前後、好景気に沸く日本へ出稼ぎ目的の多くのイラン人が来日した。
公園を占拠する様子が報道され、変造テレホンカードや薬物取引など、あまり良い印象は残ってない。
翻ってイラン人からの目線で考えれば、祖国に帰った者、日本に残った者、それぞれにまた違う風景が見えてくるだろう。
ただ、親が子を想う気持ちは何処の国でも何の宗教でも変わらない。
鯉のぼりを見て素敵だとつぶやくヌシン。
高浜市やきものの里かわら美術館『永瀬正敏写真展《bloom》』で泳いでいた鯉のぼりと繋がった。
1回鑑賞ごとにもらえるスタンプは5個で入場無料となり、劇場のカードはいくつか持っているが、5個は一番少なのでありがたい。
この日はスタンプカードで鑑賞させていただいた。
前回『さくら』を鑑賞した際に時間が合わずお寄りできなかったお好み焼きさくら。
陽気なおばちゃんが二人で切り盛りされていて、お皿もさくら柄。
いか玉 (800円) をいただいたが、素朴なほっとする美味しさ。
『ホテルニュームーン』でも「さくら」が重要なキーワードになっていたとは。
先週、伏見ミリオン座で鑑賞した天野千尋監督『ミセス・ノイジィ』。
愛知県ご出身の監督ということもあり、以前から気になっていた作品。
小説家であり、母親でもある主人公・吉岡真紀 (36)。
スランプ中の彼女の前に、ある日突如立ちはだかったのは、隣の住人・若田美和子 (52) による、けたたましい騒音、そして嫌がらせの数々だった。
それは日に日に激しくなり、真紀のストレスは溜まる一方。
執筆は一向に進まず、おかげで家族ともギクシャクし、心の平穏を奪われていく。
そんな日々が続く中、真紀は、美和子を小説のネタに書くことで反撃に出る。
だがそれが予想外の事態を巻き起こしてしまう。
2人のケンカは日増しに激しくなり、家族や世間を巻き込んでいき、やがてマスコミを騒がす大事件へと発展‥‥‥。
果たして、この不条理なバトルに決着はつくのか― ― ?!
『ミセス・ノイジィ』公式サイトより
2018年に移転前の伏見ミリオン座で黒澤明監督の『羅生門』を鑑賞した。
ある侍の死で盗賊と侍の妻の食い違う証言がそれぞれの視点で描かれ、真実とは何かを追求した作品である。
スランプに陥った小説家とある事情で早朝から布団を叩くおばさん、それぞれの視点で描くと違った物語となるが、真実は一つ。
同じ事実でも視点によって見方は変わってくる。
ネットでの第三者の視点も含めて、いろいろ言いたいことはあるが、ネタバレなしでご鑑賞していただきたい。
それは日本人とイラン人、日本とアメリカ、大きな括りでも同じである。
クリント・イーストウッドが監督した硫黄島2部作、アメリカからの視点で描かれた『父親たちの星条旗』と日本からの視点で描かれた『硫黄島からの手紙』。
「今までの戦争映画は味方と敵がいますが、人生は“悪者とヒーロー”ではないということを伝えたい。硫黄島の戦いでは両方が犠牲を払って、戦ったことをとても悲しく思います」と語っていた。