2021.3.23 刈谷日劇 『パターソン』 『この世界に残されて』
永瀬正敏特集 9/9
永瀬正敏特集『二人ノ世界』『さくら』『星の子』『ホテルニュームーン』『戦争と一人の女』『BOLT』『あん』『ファンシー』『パターソン』(鑑賞順)
全9作品、高浜市やきものの里かわら美術館で上映された『光』も併せれば全10作品、延べ11回、鑑賞完了。
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に芽生える詩を秘密のノートに書きとめていく。帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。そんな一見変わりのない毎日。パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。
(公式サイトより)
28日の次に29日が来ないことがあっても、日曜日の次は必ず月曜日が来る。
そんな当たり前な、パターソンの月曜日からの1週間。
大切な人は死なないし、事故で障害を負うこともなければ、新興宗教の勧誘もない。
ましてや戦争の犠牲や原発事故の処理など言わずもがな。
仕事でバスを運転し、犬を散歩させ、バーで一杯飲み、少女の詩に耳を傾け、パンケーキを焼き、夫婦でモノクロの古いオカルト映画を観る。
その合間に真っ白なノートに詩を綴り、スマホは持たない。
毎日同じようだけど、1日たりとも同じ日はない。
日常に潜む小さな何かを見つけられたら、それだけで人生は愛おしい。
永瀬さんの出番は少ないが、日曜日に美味しいところを全部かっさらう。
そして月曜日。
永瀬正敏特集を2017年マイベスト10の2位 (1位は無垢の祈り) にあげた大好きな作品で締め括られ、気分はパターソンのような。
続けて『この世界に残されて』を鑑賞。
小腹を満たすため100円でポップコーンを購入したが、これがなかなかいける。
小さな何かめっけ。
終戦後の1948年、ホロコーストを生き延びたものの、家族を喪い孤独の身となった16歳の少女クララは、両親の代わりに保護者となった大叔母にも心を開かず、同級生にも馴染めずにいた。そんなある日、クララは寡黙な医師アルドに出会う。言葉をかわすうちに、彼の心に自分と同じ孤独を感じ取ったクララは父を慕うように懐き、アルドはクララを保護することで人生を再び取り戻そうとする。彼もまた、ホロコーストの犠牲者だったのだ。だが、スターリン率いるソ連がハンガリーで権力を掌握すると、再び世の中は不穏な空気に包まれ、二人の関係は、スキャンダラスな誤解を孕んでゆく 。
癒えることのない心の傷を抱えた者たちが年齢差を超え、痛みを分かち合いながら寄り添う。彼らが再び人生と向き合う姿を、節度をもって叙情的に描く名作が誕生した。
(公式サイトより)
見逃していた作品を度々ここで鑑賞させていただいているが、今年のナンバー1候補を見逃さなくてよかった。
作品のトーンはパターソンに近いものがあり、大きな出来事や事件は起きないが、二人の心の機微を丁寧に描いている。
言葉とは裏腹の感情が痛いほど切なく、クララを見つめるアルドの瞳の奥にある深い愛情はどんな言葉よりも説得力を持つ。
スターリンの死を報じるラジオ放送に皆歓喜の声をあげるが、その時のアズルの表情も印象的だった。
そして、3年後のハンガリー動乱へとつながって行く。
戦争が生んだ孤独を埋め合う年の差のプラトニックな恋愛といえば『シベールの日曜日』を思い出す。
ロリコン映画という間違ったレッテルを貼られたせいか、しばらくDVD化されなかったが、2010年に紀伊國屋書店からDVDが販売され、シアターカフェで仲間内での無料上映会をさせていただいた。
こちらもオススメ。
普段から、かわら美術館や刈谷市美術館などと「何かあったら一緒にやろう」と、連係をされているそうで、今回はかわら美術館の永瀬正敏写真展『bloom』と開催期間を合わせたため、ひとりの俳優の特集としては異例のボリュームとなった。
お陰で、スクリーンを通して永瀬正敏という役者の幅の広さ奥行きの深さとポテンシャルの高さや凄味を改めて感じ、監督の声を通して作品と向き合う真摯な姿勢と腰の低さも知ることができ、やはり日本を代表する役者であると実感した。
この感覚はテレビやパソコンの画面では得られない。
そして、支配人の横に写っているTシャツと言えば、蒲郡を舞台に撮影された『ゾッキ』が3月26日より愛知県先行公開され、27日には刈谷日劇でも舞台挨拶がある。
たぶんココが一番間近で舞台挨拶を見られます。