necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

『人形たち~Dear Dolls』 『Bird Woman』

 

2023.9.23 シアターカフェ

長編オムニバス映画『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』

舞台挨拶 紀那きりこさん(『怒れる人形』サラサ役)、海上ミサコ監督(『怒れる人形』)、大原とき緒監督(『Bird Woman』『Doll Woman』)

 


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4人の女性監督が女性であることから感じる生きづらさについて人形をモチーフにしてそれぞれの視点から描いたオムニバス。

『Bird Woman』では人形ではないけれどマスクというモチーフに共通点を感じ、電車内の痴漢に対しひとりの女性が行動を起こすことにより社会的な大きなうねりを生むのだが、SNSの弊害についても考えさせられる。

私としては痴漢と聞けば冤罪に遭わないようにという男性的発想しかなく、女性の心の傷の大きさまで考えは及ばなかった。

たとえ痴漢に遭わなくても満員電車に乗るだけで女性にとっては恐怖なのだろう。

もし、その現場に出くわしたら Bird Woman のように恐怖で声を出せない女性を助けることが出来るのだろうかと自問自答しながらの鑑賞。

 

 

とりあえず鳥のマスクは被らなくても「痴漢撃退!缶バッヂ」は男女とも必須のアイテムである。

 

 

『Doll Woman』では、人形を集める女性ホームレスと同じ趣味をもつ耳の不自由な男性ホームレスとの出会いを描き、人とのコミュニケーションに生きづらさを感じ人形とおしゃべりする女性にとって言葉を持たない男性は理想の相手なのだろう。

人形はその持ち主との関係を雄弁に語り、触れ合う人間の感情や思いこみを引き受け、おしゃべりな女性より寡黙なご主人様がいいと話す。

日常生活の中で誰しも一つ一つの言葉の意味合いを深く考えず意識せず人を傷つける場合があり、そういう世の中で同じ生きづらさを持つ者同士の上質なラブストーリーでもあった。

 

 

『怒れる人形』に出演された紀那きりこさんは愛知県のご出身で、母校はシアターカフェから近い白壁あるそうなので、有名お嬢様学校かと思ったがバイオリンで音楽の道を進みたいと思っていたことからあちらの高校なのだろう。

上司からセクハラを受け生きづらさを感じながらも仕事のために拒めず、お気に入りのカウボーイの人形のスタイルとなってセクハラ上司と対峙する妹に感化される役柄で、私も残りの人生を考えて何よりも自分を大切にしたいと思っているところ。

人から褒められて金銭欲や優越感を充たしたいという思いから脱却して、大したことのない自分を生きればいいと思えれば生きにくさは薄まる。

 

 

作品は他に、土偶ジェンダーによる現代の生きにくさについて太古の考えで少女に語り掛ける『JOMON わたしのヴィーナス』(西川文恵監督)、ゴダールへのオマージュであり『気狂いピエロ』を想起させ芸術的アプローチの『オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景』(吉村元希監督)といったラインナップ。

 

 

シアターカフェのオーナー江尻さんも女性であることでお店を経営していく中での生きにくさを感じられているのではないかと思われる。

日本の社会は女性や LGBTQ の意見に対し不寛容で成長せず、変化を恐れ、世界から大きく後れをとっている。

 

 

ファイティングポーズを取る登壇者のみなさん。

女性は彼女たちに背中を押されに、男性は叩きのめされることを覚悟して、ぜひ足をお運びください。