2020.10.25 聰音 -SATONE- 中垣あかね (vo) 藤川幸恵 (pf)
燈門から聰音に店名を変えて移転されてから初訪問。
扉を開けると、なんということでしょう。
そこは、マスターおひとりで切り盛りされるには理想的と言っていい空間。
燈門では窮屈にしていたピアノはゆったりと置かれ、ピアノの上もすっきりと。
その両側にはスピーカーが新調され音響もバッチリ。
ステージのカーテンの奥が控えスペースになっていて出演者への配慮も怠りない。
客席はバーカウンターの他にステージと向かい合った壁にもカウンター席があり、フロアには小さなテーブルがいくつか置けるジャストサイズ。
岸田マスターもリニューアルされて精悍さが増した感じ。
カレーは相変わらずの安定の美味しさ。
日が過ぎていく毎に愛が深まっていくと歌うスタンダードナンバー『Day by Day』の曲紹介で、「動物に対する愛は毎日毎日深くなっていくとしか言いようがないので、いつも飼っている猫のことが思い浮かびます。さっちゃんは犬派ですよね。犬を思い浮かべながら聴いていただきたいと思います」と、あかねさん。
一瞬、はっ?となったが、言葉のやり取りが介在しないからこそ、嘘のない真実の愛がそこにはあるのだろう。
猫のような甘く胸をくすぐる歌声に、犬が元気に庭を駆けまわるようなピアノソロ。
オリジナル曲では、「もし猫ちゃんがいなくなったらどうしようという気持ちで書きました」と言うだけあって、感情移入がすんごい。
苦手な曲に果敢に挑戦した『How High The Moon』。
アカペラからピアノソロへ、そして心の動きのように歌とピアノが絡み合う『Fly to the Moon』。
本能のままに音とじゃれ合うステージ上のふたりはもう犬と猫にしか見えない。
ここにある音はこのふたりでしかあり得ない。
最高のライブのあとの一杯はうみゃーにゃー。
そんな、猫好きなあなたにオススメの映画。
青山真治監督『空に住む』。
主演は多部未華子さんと黒猫。
「愛を喪失し、それでも未来へ歩き出す女性たちへ、エールを送る物語」
おっさんが行っても大丈夫?と思わせるコピーだが、『ロストベイベーロスト』の舞台挨拶に立たれた松尾渉平さんのピンクの髪を探しにMOVIX三好へ足を運んだ。
「多部さんにお会いになられたのかな」とは、失礼なことを書いてしまった。
多部さん演じる直実が勤める出版社の同僚役ではないですか。
花と同化してわかりにくいが、0:23にピンクの髪だけ一瞬映っている。
「ハルに出会ってから私は大丈夫になったんだよ」
人間よりも猫の方が大切なものを与えてくれる。
ドイツ出身の神学者・哲学者にして医師であり音楽家のアルベルト・シュヴァイツァーの言葉。
「人生の惨めさから抜け出す慰めは2つある 音楽と猫だ」
頭の中では J Soul Brothers と共に、あかねさんの『Day by Day』が鳴っていた。