necojazz’s diary

ジャズを中心に雑食

映画コンパ!略して映コン!(シネコンじゃないよ)2023年マイベスト10 映画を語ろう会

 

2023.1.21 シアターカフェ

映画コンパ!略して映コン!(シネコンじゃないよ)2023年マイベスト10 映画を語ろう会

 

シアターカフェオーナー 江尻真奈美さん 

PERFECT DAYS ベネデッタ 逆転のトライアングル リバー、流れないでよ  イノセンツ 波紋 愛にイナズマ ウーマントーキング 正欲 ファースト・カウ

おまけ BE:theONE

次点 バービー ボーンズアンドオール オオカミの家 月

 

TRONさん

1.ゴジラ−1.0 2.ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたち 3.フラッシュ 4.BLUE GIANT 5.ザ·クリエイター/創造者 6.コマンドーニンジャ 7.Sand Land 8.グランツーリスモ 9.ヴァチカンのエクソシスト10.Coldplay – Music of the Spheres: Live at River Plate

ホラー、グロNG

 

中川さん  

長ぐつをはいたネコと9つの命 ②光をみつける ③銀平町シネマブルース ④波紋 ⑤コーンフレーク ⑥あつい胸さわぎ ⑦映画ドラえもん のび太と空の理想郷 ⑧福田村事件 ⑨映画 窓ぎわのトットちゃん ⑩ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

・PERFECT DAYS ・ウィッシュ この2作品は入れてたら上位に入るくらい良かったです。

番外編 ・翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜

 

nagotakeさん

1.銀平町シネマブルース 2.PERFECT DAYS 3.リバー、流れないでよ 4.パリタクシー 5.一生売れない心の準備はできてるか 6.ぼくたちの哲学教室 7.光をみつける 8.アンダーカレント 9.よっす、おまたせ、じゃあまたね。 10.炎上する君

〈次点〉

雨の詩  たぶん杉沢村  こいびとのみつけかた キリエのうた  さよなら ほやマン 彼女たちの話   ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい 長ぐつをはいたネコと9つの命  市子 翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~ 人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版 劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室

 

羽田 (私)

1.PERFECT DAYS 2.市子 3.あしたの少女 4.月  5.正欲  6.怪物 7.アンダーカレント  8.コンパートメントNo.6  9.せかいのおきく 10.遠いところ  

次点. もう一度生まれる

 

「自分のベストは他人のワースト、他人のベストは自分のワーストかもしれないからそれぞれのベスト10を尊重しようっ」

江尻さんの名言で始まった語ろう会。

15時~17時までの予定が2時間以上延長して、お店を出るときには19時をまわっていた。

あっという間で語りっぱなしの4時間。

参加者のみなさん、楽しいひと時をありがとうございました。

 

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1位にさせていただいた『PERFECT DAYS』の感想は、2017年マイベストテンの2位の『パターソン』と重なる部分が多く、つまり何気ない日常にもドラマは潜んでいるという、私の大好きなジャンルである。

ちなみに次点の『もう一度生まれる』も同じテイストで、『PERFECT DAYS』が公衆トイレの清掃員ならば、こちらはスーパー銭湯で日々清掃する従業員達の姿を描いていて、そして彼らは閉店してしまった銭湯にこれまでの感謝を込めて黙々と清掃する。

ニュースで能登半島地震の被災地の様子を見ていると、食料支援は届いていてもトイレに困っているという声やお風呂に入りたいという声が多かったように思え、公衆トイレや公衆浴場が普通に利用できるのは決して当たり前のことではなく、その有難さに改めて気付かれた方も多いだろう。

自転車乗りとしても公衆トイレはとても助かるし、役所さん演じる平山も日々銭湯の恩恵に与っている。

普段は当たり前だと思っていることが、実際は当たり前ではないと気付けるだけで、そのことに感謝し、幸せを感じることが出来る。

 

 

『アンダーカレント』の記事をご高覧いただいたHonky-Tonk のマスターが原作コミックを貸して下さり、探偵の山崎がリリーフランキーさんそのものだと思ったら、当て書きされたそうで、それから20年後にご本人が演じられるとは、そこにもドラマを感じた。

『正欲』は原作小説を読んで、原作とは違う映画映えするラストシーンも良かったし、それに重厚感を持たせるための足し引きの塩梅が絶妙で、素晴らしい脚本だと感じた。

これには原作者の朝井リョウ氏もご納得されたに違いない。

 

 

自分の1位から10位までの主役の名前を並べてみると、1.役所広司 2.杉咲花 3.ペ・ドナ&キム・シウン 4.宮沢りえ 5.稲垣吾郎新垣結衣 6.安藤サクラ 7.真木よう子 8.セイディ・ハーラ 9.黒木華 10.花瀬琴音 (敬称略) と、圧倒的に女性が多かったが、あることに気付いた。

ふたりだけの男性陣、役所広司さんと稲垣吾郎さんは2004年公開の『笑の大学』(原作・脚本 三谷幸喜、監督 星護) でW主演をされたご両人ではないか。

この作品も大好きだったので久しぶりに観たくなり配信を探したところ、どこも配信していないし、公式の予告編すら見つからない。

何故?

でも、そうなると益々観たくなるのが人の性。

 

 

このためにレンタル会員になるのも面倒だったので、DVDを購入した。

 


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ときは、昭和15年の警視庁保安取調室。

人生で一度も笑ったことのない男、役所広司さん演じる検閲官・向坂睦男と、笑いに命をかける男、稲垣吾郎さん演じる劇団「笑の大学」座付作家・椿一。

戦争の色が濃くなるにつれ、芝居台本の検閲も厳しさを増していた。

作品の9割くらいが取調室でのふたり芝居なので、役者の力量が問われるところだが、やはり役所さんは圧倒的だったし、稲垣さんも負けじといい味を出していた。

『正欲』では検察官として取り調べる側だった稲垣さんが検閲を受け、『PERFECT DAYS』で寡黙だった役所さんが喜怒哀楽満載なのも面白い。

2023年マイ主演男優賞ふたりの20年前の対決は見応え十分で、稲垣さんは当時の役所さんの年齢を越えられて、本当にいい俳優になられた。

興味のある方は是非レンタルでも。

さるまた失敬。

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 4Kリマスター

 

2024.1.13 MOVIX三好

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 4Kリマスター』

 


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1978年に公開された『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が、半世紀近くの時をワープして4Kリマスターとして公開された。

 


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私のブログのアイコンのブサ猫は、グラフィッククリエーターの渡邊春菜さんにデザインしていただいたもので、顔から伸びているのはひげでなくまつ毛である。

中学の仲の良いクラスメイトからも「ア~ア~」とか言われるくらい長く、松本零士先生の作品には多大な愛着を感じている。

 

 

公開当時は中二で、ボロ泣きしたなぁ。

ガトランティスの超巨大戦艦がチュドンすればヤマトはひとたまりもないのにと、理屈をこねて観てはいけない。

暗い劇場の大きなスクリーンと大音響の中で、60歳手前のおっさんの心は中二の時にワープしエネルギーを充填した波動砲に撃ち抜かれた。

こういう体験はテレビやパソコンやスマホの画面では出来ない。

劇場でなければ出来ない。

やはり映画は劇場で観るべきものである。

 

 

今でも大した稼ぎではないが、中学生の小遣いで映画を観てサントラを買うのは大変なことであった。

LPが欲しくてもお金が足りなくてシングル盤を購入したのも結構ある。

なので、1枚のレコードに対する思い入れは、サブスクで気軽に何でも聴けて音楽は消費するものとなったデジタル配信とは全然違う。

宮川泰先生のシンフォニック・オーケストラを間接照明だけにした暗い部屋で聴くのがお決まりで『白色彗星』では底知れぬ悪を感じるパイプオルガンのど迫力に圧倒され、ラストシーンで流れる『大いなる愛』には何度も涙した。

 

 

映画のエンドロールでは、沢田研二さんの歌う『ヤマトより愛をこめて』にダメ押しされる。

作詞・阿久悠先生、作曲・大野克夫先というジュリーの数々のヒット曲を生み出したゴールデンコンビに編曲で宮川泰先生が加わったまさに無敵艦隊

アルバムのラストを飾るこの曲はインストメンタルバージョンで、こちらもいいのだが、やはりサントラの締めにジュリーの歌声は欠かせない。

 


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映画のテーマの芯を貫く歌詞も素晴らしい名曲。

 

 

「何もかも皆懐かしい...」 

Rokusalon JAZZ TIME 2024  安ヵ川大樹 柳原由佳

 

Rokusalon JAZZ TIME 2024   安ヵ川大樹 (b) 柳原由佳 (pf)

 

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コロナ禍になる前は恒例だった安ヵ川さんの奈良ろくさろんでの謹賀新年DUOライブ。

4年振りとなるが、高田ひろ子さんとのライブがついこの前に感じるのは、それだけ印象深かったからだろう。

 

 

お名前は以前からお聞きしていたが、初めて音をお聴きする柳原さんとのDUOも4年前に匹敵する印象深いライブとなった。

2ndのラストとアンコール以外はそれぞれのオリジナルというプログラム。

コロナ禍の期間も悪いことばかりではなく曲がたくさん書けたと安ヵ川さん。

オープニングの2曲はその中からのナンバーで、苦境の中でも希望を持とうという思いからなのだろうか、どちらも明るい日が差し込んでくるようなキラキラとした音色とメロディー。

枯れたと思っていたベランダのバラに見つけた蕾は希望の証し。

続いて柳原さんのオリジナルを2曲。

どちらも辛い気持ちを癒してくれるようなしっとりとした優しい旋律で、窓の外で囀る小鳥による自然の効果音とも調和していた。

インスピレーション溢れるいい曲を書かれる方だ。

 

 

柳原さんはこの日が初ろくさろんだが、4年前に予定していたここでのライブがコロナ禍で流れてしまったそうで、そのリベンジとなるライブを2月10日に開催されるとのこと。

関西方面の方は是非。

トリオのメンバーである山田吉輝さん(b)と則武諒さん(dr)はバークリー音楽大学からの仲間で、その学生時代に課題として書いたという『Green Ocean』も披露された。

青と緑が織りなす紺碧の海で自由に泳ぐイルカの姿が思い浮かぶ心地よいナンバーは、厳しい先生からA⁺の評価をいただいたということだけあって、完璧。

 

 

その曲の入ったアルバムはなかったため、山田吉輝さんとのDUOアルバム『Embrace』を購入して帰りの長距離ドライブでライブの余韻に浸った。

安ヵ川さんは関西でのライブの予定はないそうだが、2月に名古屋でニュートリオのライブがあるとのことで「名古屋の方はよろしく」と、私の方をジロリ。

https://www.staglee.com/events/8330/%E5%AE%89%E3%83%B5%E5%B7%9D%E5%A4%A7%E6%A8%B9%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AA

名古屋でのライブは2月8日スターアイズにて、市川空さん(p)と塚田陽太さん(ds)とのニュートリオ。

メンバーのお二人とも初めてお聞きする名前で、常に新たな音を取り入れている姿勢はカッコイイ。

そのニュートリオのアルバムは売り切れとのことで、安ヵ川さんがサイドメンで参加された岸淑香さん(pf)のリーダーアルバム『Banquet』をリリース日の前にフライングゲット

こちらも初めてお聞きする名前だが、センスの高さに腰が抜けるほど驚き、伊賀ドライブインに車を停めてスマホで検索。

ジャズにサルサやフラメンコなどの様々な味付けをして見事に調理した腕前はまさに音の大宴会。

「ジャズは自分の中では瞬発的なもの」で、ジャズピアニストでという意識はないとのこと。

なるほど、淑やかに香るヤバさが堪らない。

 

 

2ndのラストは柳原さんが安ヵ川さんとのDUOでやりたかったいうフレッド・ハーシュの『A Lark』。

Green Leaf に囲まれたろくさろんで、大樹から飛び立った雲雀のように生き生きとした旋律が旋回するように舞っていた。

2023年映画ベスト10 『市子』 

 

2024.1.3 伏見ミリオン座  戸田彬弘監督 『市子』

 

2023年映画ベスト10

1.PERFECT DAYS  2.市子  3.あしたの少女  4.  5.正欲  6.怪物  7.アンダーカレント  8.コンパートメントNo.6  9.せかいのおきく 10.遠いところ  次点.もう一度生まれる

 

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昨年劇場で鑑賞した映画の中で2位にさせていただいた『市子』をパンフレットを読み込むなど、いろいろ踏まえての2度目の鑑賞。

 


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前回の投稿で市子と母なつみの鼻歌について触れたが、どこかで聴いたことのあるようなメロディーは『にじ』という曲で、その歌詞を噛みしめて観ると心にじんわりと沁みてくる。

市子が夏の晴れ間の急な雨に「最高や!ぜんぶ流れてしまえ!」と叫び、ぜんぶ流れたあとの空には虹が架かっていただろう。

月子とのシーンについても自分なりの答えは出た。

 

 

市子をさがす若葉竜也さん演じる恋人の長谷川が、座布団の座り方で市子がそこに居たことに気付くのだが、そんな座り方あるか?と気になっていたが、確かにくせのある座り方だった。

そういうことを確認しながら観るのも2回目以降の楽しみ。

 

 

杉咲さん目当てで鑑賞した『法廷遊戯』では、クライマックスの面会室での壊れ方は『接吻』での小池栄子さんを彷彿させるくらいの狂気を感じ、そのシーンを観られただけでも十分に価値があった。

 

ミリオン座のディスプレイも狂気的。

パンフレットでは黒澤明監督『羅生門』と野村芳太郎監督『砂の器』との関係性について触れていたが、もうひとつ私が加えるならば『砂の器』と同じ松本清張原作・野村芳太郎監督の『疑惑』。

桃井かおりさん演じる鬼塚球磨子のように男に悪魔と言わせる川辺市子。

ラストシーンもおそらくそうだろうと仄めかすだけで、疑惑のままである。

桃井さんあっての球磨子だったし、市子も杉咲さんだったからこそ傑作になったと言える。

 

 

ミリオン座へ今年の映画初めに向かう前に今年のジム初め。

筋トレ開始初日から、体重-0,8kg、筋肉量+3.7kg、体脂肪率-6.7%。

先月から、体重+1.0kg、筋肉量+2.3kg、体脂肪率-2.4%。

筋トレを始めて6ヵ月、浮き沈みはあるものの1ヵ月1%くらいずつ体脂肪率が減ってきている。

今年は昨年よりも減るペースは落ちるだろうが、年内に体脂肪率15.0%を目指したいと思う。

 


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映画の中で写真が重要なアイテムとなっていて、行ったり来たりする時をカメラの日付表示で表していた。

パンフレットには家族のように4人揃って写真を撮ったときの経緯が書かれていて、みんなが笑顔だった理由がわかる。

その笑顔からどんどん歯車が狂っていき、できることならあの日に戻ってやり直したいとみんなが思っていたに違いない。

「笑い顔の昔の家族の写真」と歌う『狂った朝日』と重なる。

『市子』 『PERFECT DAYS』

 

2023.12.25 伏見ミリオン座 

戸田彬弘監督『市子』

ヴィム・ヴェンダーズ監督『PERFECT DAYS』

 


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クリぼっちに鑑賞した二本はどちらもぼっちな映画。

『市子』はプロポーズされた翌日に失踪をせざるを得ないという自分ではどうしようもない境遇での孤独で、『PERFECT DAYS』の平山は貧しいながら生活をコントロールできる中で自ら選択した孤独。

孤独の意味が全く違うが、一人で生きていくことへの力強さを感じたのは同じ。

杉咲花さんと役所広司さんという稀代の名優が、それぞれに思いを込めた市子と平山という人物に引き出された名演を見るだけでも十分に価値のある二本は、クリぼっちにとっての最高のクリスマスプレゼントだった。

 

 

実際に起きた障がい者殺人事件をモチーフにした『月』で突き付けられた問いを、改めて問い直されているようなシーンでの月子の瞳が胸に刺さり、あの瞳は何が言いたかったのか鑑賞後も考えている。

法制度の不備を取り上げた社会派ミステリーとしては上質で凄みもあったが、市子を語る上で重要人物である月子の視点がもう少しあれば尚良かったように思う。

たまたま日本語字幕付き上映で鑑賞したおかげもあり、そのシーンでの母なつみの鼻歌と市子が他のシーンで歌う鼻歌が同じであることがわかり、あの歌は市子の中での家族の繋がりなのだろうと思いながら鑑賞。

エンドロールで小さく聞こえる会話も字幕でしっかりとわかった。

 

 

『市子』では数々の証言によるかたちで市子の過去が浮き彫りになるが、『PERFECT DAYS』では公衆トイレの清掃員になるまでの平山の過去は語られない。

ただいくつかのシーンから少し推測できて、読んでいる本からインテリジェンス高さや、運転手付きの高級車で訪れた妹とのやりとりから良家の育ちであること、家族とは疎遠で父親との確執なども伺える。

そして度々夢で見る木漏れ日の映像は穏やかな心を意味しているのか。

高級車の後部座席と清掃道具を乗せた軽自動車、傍からだと前者の方が幸せに見えるが、幸せとは主観的なものである。

「幸せな時期もあったんやで」市子の母の台詞がリフレインする。

 


『市子』のパンフレットには恋人の元から失踪するまでの年表が載っていて、それを読んであの鼻歌の意味が分かった。

母の「ありがとう」は、月子の気持ちでもあったのかも知れない。

それを踏まえてもう一度観たい。

『PERFECT DAYS』のパンフレットには平山が古本屋で購入して寝る前に読んでいた本が紹介されていて、パトリシア・ハイスミスを読んでから観ると、姪との会話の意味も分かるのかな。

 

 

市子の家庭ではクリスマスにケーキを食べることはなかっただろうし、平山はクリスマスケーキに何の興味もないだろう。

市子と平山にメリークリスマス。

栗林すみれ・西嶋徹 WINTER TOUR

 

2023.12.23 BIRD&DIZ

栗林すみれ (pf)  西嶋徹 (b)

 


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早速、元木マスターがライブの動画をアップされていた。

昼間にフィンランドガラスアートの鑑賞や、美濃焼でのお抹茶の一服に、うな釜をたまごで包んだオム釜なるものを頂くなど、美濃地方の大人の体験巡りをされたそうで、すみれさん曰くこの夜のテーマは「上質な大人」。

『Pieces of Color』に代表されるようなめくるめく色彩豊かで華やかな世界もいいが、モノトーンで落ち着いた音に惹かれる傾向が増してきているのは自分が年をとったということなのだろう。

「バラードが続きますが、寝かせにかかりますか」との言葉の通り、派手さはないが、哀愁、愉悦、苦辛、寂寥等々、心の揺らぎが丁寧に紡がれた叙情的な音色は様々な経験と鍛錬を積まれた賜物。

ただ年をとっただけの私からすれば上質な時を重ねて来られたお二人の音色に真の大人を感じた。

これまで歩んできた道にしっかりと足跡を残す生き方は大人である。

木漏れ日を感じるパーフェクトライブ。

 

 

2019年の5月から始めたブログでBIRD&DIZの記事を書くのは初めてであり、Facebookを遡ると2019年4月27日の『二重奏(栗林すみれ&金澤英明)with今岡友美』以来であった。

コロナ禍が明けて他のお店がライブを再開される中、ずっと休業されたままだったのでマスター大丈夫か?と心配していたが、お元気そうで何より。

 

 

4年半前はオレンジのキャップに全身真っ赤の電撃ネットワークだったが、この日は白を基調にされていてライブの空気感とマッチした上質な大人のスタイルだった。

 

 

すみれさんが藤本一馬さんと8月に録音された限定200枚の自作の闇CDと、西嶋さんが林正樹さんと10年前に制作された垂涎のCDはどちらもモノクロが基調。

闇CDは残り3枚ということで、休憩時間に即購入。

帰りの車内で聴きくと、2枚とも静寂な夜に溶け込む大人のアルバムであった。

 

 

翌日、ジャズ茶房靑猫でリクエスト。

靑猫のひんやりとした大人の空間にもよく似合う。

『THE ROAD TO A NEW JOURNEY』の『Nascente』を聴いていると「この曲パットメセニーも弾いていなかった?」と高橋マスター。

「さぁ~わかんないです」と返すと、暫し考えてから4000枚程のCDが並ぶラックから1枚取り出した。

 

 

パットが参加しているマイケルブレッカーのリーダーアルバムに収録されていて、それを聴きながら「こういう記憶力は自信があるんです」と、ご満悦の表情。

大人の仕事をされてます。

アンダーカレント

 

2023.12.18 刈谷日劇 

今泉力哉監督 『アンダーカレント』

 

 

ジャズ好きが『アンダーカレント』と聞けば、まずビル・エヴァンス(ピアノ)とジム・ホール(ギター)によるデュオアルバムを思い浮かべるだろう。

インタープレーの極致とも言われる演奏の素晴らしさは言うまでもないが、一度見たら忘れられないジャケットも印象的な名盤である。

映画の中でこのジャケットを彷彿させるイメージカットが何度か繰り返されていて、原作はコミックらしいが、原作者の豊田徹也氏がこのアルバムからインスパイアされたと思われ、『窓辺にて』や『街の上で』など、オリジナル作品の印象が強い今泉力哉監督が、20年近く前のコミックを映画化されたのも興味深く、原作本も読んてみたい。

 


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『アンダーカレント』は底流を意味しており、表面的ではない心の底流にある部分が作品のテーマになっていて、予告で「人をわかるってどういうことですか?」と失踪した夫を捜す探偵役のリリーフランキーさんの台詞があるが、自分のことすらろくすっぽわからないのに、ましてや人のことなどわかるはずもなく、わかっているつもりになるだけである。

 


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このレコードが録音された1962年はベーシストのスコット・ラファロが自動車事故で亡くなった翌年で、大切な盟友の突然の死によって失意の底に沈んでいたエヴァンスが復活するきっかけになった作品と言える。

インタープレーとは会話のように相手の演奏に呼応する相互作用のスタイルで、相手の音を理解しようとする姿勢が必要となり、自分だけ目立てば良いという演奏では成立しない。

映画もお互いに喪失感の中でもがきながら新たな一歩を踏み出そうとし、様々な解釈ができる余韻の深いラストシーンも素晴らしかった。

人のことをわかることができなくても、わかろうとすることが大切である。